今回の関西方面への出張で最後に訪問させていただいたのは、愛知県一宮市の池尻弦楽器工房でした。

池尻弦楽器工房さんは、池尻さんご夫妻によって営まれているとても閑静な地域にあるとてもすてきな工房です。
今回はこちらで東海バロックプロジェクトのメンバーの方々と肩掛けチェロなどの試奏の機会をいただくことができました。






これだけ多くの方に試奏いただける機会はそう多くないので、メンバーの皆様の柔軟な姿勢をとてもうれしく受け止めさせていただきました。
肩掛けチェロは、未だに、バロックやピリオド演奏の本場と言われるローカントリー(ベルギーやオランダなど)での誤解が非常に根深く(ローカントリー出身の某音楽学者が非常に中途半端な論文を出してしまったことが原因と思われます)、近年はドイツなどで研究が進んだにもかかわらず、ローカントリー出身の演奏家や製作家の方とお話しすると残念ながらそうしたことが伝わっておらず、遅れを感じてしまうことが少なくありません。
それでも柔軟に、冷静に事実に耳を傾けて下さる方にはこちらも調査の成果をシェアさせていただこうという気になりますが、上から目線で来られるとこちらも人間なので、ついつい説明するのが面倒になり、ではどうぞお好きなようになさっていてくださいという気になってしまいます笑笑
そうした中で、チェリストの髙橋弘治先生(ローカントリーで学ばれ、活躍されました)のような柔軟な探究心あふれる方が活躍される東海バロックのメンバーの方々に楽器を試していただいたのは本当に貴重中で機会でした。
メンバーの一人であるヴァイオリニストの磯部さんに、なぜ肩掛けチェロの普及という困難に見える道をわざわざ選んだのかという質問をいただきましたが、一言で言うならば、私自身が自由を愛するからかなと後から思いました。
音楽はしばしば正しい、正しくないという観点から語られますが、研究の対象として語られる時には良いとしても、それが演奏の時までに奏者の頭を支配しているようなことは一音楽ファンとして私は正直好みません。
ましてや、肩掛けチェロは研究の対象としてさえも十分な議論がなされないまま、判断されてしまったようなところがあり、そういう不自由な頭に支配されている状況が窮屈に感じられます。
どんな表現ができるだろう、どんな喜びを届けられるだろう、どんな楽しみを新たに創れるだろうということに心を躍らし、また実際の演奏の中でその美しさ、充実感に心満たされることが音楽だと思うので、どこまでと音楽には自由であって欲しいのです。
そして歴史的な考証が必要だと言うなら、噂話を信じる前に、少しは調べていただくか、調べた人から話を聞いていただきたいと思うのです。
今回は中部地方も初めの訪問でしたが、自由と創造性の騎手として肩掛けチェロを手にして下さる方が少しずつ増えていくことを楽しみに私も作り続けたいと思います。
東海バロックプロジェクトの皆様、そして、池尻弦楽器工房の池尻さんご夫妻、貴重な機会をいただきありがとうございました!またお目にかかれる機会を楽しみにしております。