ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラについて

ヴァイオリニストとヴィオリストのためのチェロ

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ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラは、「チェロ」のイタリア語名であるvioloncello と、「肩」を意味するspalla が組み合わさった名前で、直訳すると「肩のチェロ」という意味になります。

「肩掛けチェロ」と呼ばれることもありますが、この聞きなれない名前の楽器は、バッハ(J.S.Bach)の時代には単に「チェロ」と呼ばれていたと考えられる小型の5弦チェロの1つと考えられています。

「今日ではヴィオロンチェロVioloncelloも両足に挟んで演奏する」(レオポルト ・モーツァルト著『ヴァイオリン奏法』1756年より)

特徴としては、両足にはさむのではなく、ストラップを肩に回し掛けて、ヴァイオリンやヴィオラに比較的近い形で横に構えて弾きます。また、完全にチェロの音域をもちながら、1弦にミ(E)の音を足して5弦としています。

バッハのチェロ無伴奏組曲も、実はこのような横持ちの小型チェロを念頭に作曲された可能性があると考えられています(※当時の弦の供給事情から、一般的なサイズはもっと大きかったと考えられますが、バッハ自身はviola pomposa と呼ばれた小さな5弦楽器を持っていた可能性があると考えられています)。

事実5弦のチェロを指定している曲もあり、実際に横に持つことで、縦に持つ現代の大型のチェロに比べて自然な運指が可能となることが知られています。バッハの曲にはこれ以外にもヴァイオリンのように弾く横持ちのチェロを想定して曲を作ったと考えられるものがいくつもあり、また他の作曲家についても同様のことが言えるのです。

歴史的にはviola di spala、basetto viola, viola pomposa、violoncello piccolo など様々な呼称が見られました。(※viola pomposa は現在では、バッハ以後の作曲者のにおいてはヴィオラ調弦をもつ別の楽器と考えられています)

このような小型チェロは、当時様々なサイズのチェロがあった中で、比較的大型のチェロを弾く専門職チェリストの出現と急速な演奏テクニックの進歩や、より大きなホールで大きな音量を求められる傾向に拍車がかかっていったことなどにより歴史の中では姿を消したと考えられています。

しかしながら、多くのすばらしい作曲家たちがヴァイオリンのような豊かな表現力を求めてその表現を託した様々なサイズの小型5弦チェロには、かつてバッハの無伴奏チェロ組曲がまったく忘れ去られていたと同じように、忘れられた大きな可能性が眠っていると当工房では考えています。


 

私は、10数年来の友人であり、オランダに拠点を置くディミトリー・バディアロフDmitry Badiarovさんより、多くの演奏家のために作ってきたデザインを譲り受け、この小さなチェロを作っています。

バディアロフさんのデザインは、シギスヴァルト・クインケン氏や寺神戸亮氏、セルゲイ・マーロフ氏などの演奏家のために製作されたものです(厳密には個々の仕様は少しずつ違います)。

また彼のデザインのもととなった楽器の1つであるベルギー・ブリュッセル楽器博物館所蔵のJohann Christian Hoffman 1724 や、武蔵野音楽大学のviola pomposa などの調査や資料収集を続け、楽器作りに反映しております。

弦の選定については、イタリアのガット弦専門家のDaniela Gaidano 氏の年間バックアップを特別に受けております。

ぜひ多くの方にご試奏いただき、またこの楽器に挑戦する方が増えてほしいと思っております。ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。

 

(当工房のスパッラを演奏するDmitry Badiarov氏、2019年5月スペイン・ランサローテにて)


スパッラの製作風景

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楽器のご注文について

木材のストックは常にありますが、ご注文は前金をお振込みいただいた順番で開始いたしますので、納期がかかる場合もあることをご了承いただければ幸いです。

(※ご注文予約は試奏なしでも受け付けておりますので、ご試奏いただいた順と納品順が同じとは限りません)