バロック・ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ

調査を踏まえた製作

当工房では、ヴェネツィアのInstituto della Pieta Venezia のバロック楽器群やMuseo Correr などの博物館、クレモナのMuseo Stradivariano(現在のMuseo del Violino)、台湾の奇美博物館、個人所蔵のオリジナル楽器への直接調査と観察、また資料収集などを踏まえつつ、現代の環境で楽しんでいただけるバロック・ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを製作しております。

現代においてバロック・ヴァイオリンが作られるときに製作者の思いつきで構造を決めてしまうことがしばしばあり、調査に基づいて製作された楽器は実は市場にも多くありません。そのため演奏者自身が購入後に、楽器の問題に気づくことも決して少なくありません。課題を抱えた楽器で演奏していると、気持ちの面からパフォーマンスにも少なからず影響が出てしまいます。

そのため、調査に裏打ちされつつ、次世代に渡って価値を持ち続ける楽器を可能な限り提供していきたいというのが当工房のヴィジョンとなっています。

オリジナル・デザインによる製作

昔の楽器をコピーしたり、モデルとして製作することが主流となってしまった現代においても、ハーモニカル・プロポーションを用いた昔ながらの方法でゼロから楽器を設計することは可能です。

当工房ではかつての人々が古い楽器ではなく、オリジナルの新作楽器を使って各々の時代に演奏をしていたという考えに基づき、コピーではなくオリジナルのデザインによる楽器提供を精力的に行っております。

この設計手法は残念ながら本場イタリアなどでも失われてしまっており、そのため昔の楽器を見てその再現をすることが慣行となっています。またそのことが、オールドやオリジナルと言われる古い楽器の価格高騰につながる業界構造を招いてしまっているようにも思われます。

なぜ、イタリアでも行われていないような方法を埼玉県の小さな工房ができるのかというと、こうした方法を共有する少数ながらも探求に熱心な世界の製作家のネットワークがあるためです。

もちろん、当工房でも古い楽器を参考にすることはありますし、幾世紀もの歴史をまとった楽器ならではの魅力はありますが、今日世界中で行われているような写真やポスターから外形を写し取って作るような楽器作りを昔の人が見たら驚いてしまうに違いありません。

(下:ハーモニカル・プロポーションによる製図を行うとすべてが無理なく、自然と配置されていきます。また、製作者ごとに耳は違うため、伝統に沿いつつも個性が自然と生まれます。)

また皆さまが当工房楽器をお使いいただくことで、バロック・ヴァイオリンの本来的な姿について、皆さまご自身が周囲の方々に構造や作りを語っていただき、知識の普及にも貢献しただけると思います。

そのように使っていただける楽器を持っているということで、一層安心して永く、愛着と自信を深めながらお使いいただけるとも考えております。

弦については、かつてアクイラAquila社にも勤めていたイタリアのガット弦エキスパートDaniela Gaidano氏にアドバイザーをお願いしており、当工房で解決が難しいような専門的な内容も直接問い合わせて、アドバイスをもらっております。

ご試奏をご希望の方は、お気軽にご連絡ください。

 

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(写真上、Istituto della Pieta の楽器群カタログ(絶版)。2003年ごろに製作家Luca Primoとともに現地再調査を実施)

(博物館における採寸調査風景、当時の同僚N.Vendrame (奥)と筆者(右)、2003年ごろ)