Locus of control とれていますか?

Locus of control(ローカス・オブ・コントロール)という言葉を皆さん聞いたことはありますか?

これは教育心理学の言葉だということですが、その意味を簡単に説明すると自分の人生をどれだけ自分でコントロールできているか、あるいはできていないと感じるかによって幸福感の度合いが変わるという理論です。

日本語に直すと、「統制の所在」論という言葉になるようですが、難しい理論は別としても、わかりやすい話ではないかと思います。

自分で思うように仕事ができ、すばらしい人々に出会い、望むところに行くことができれば十分幸せを感じられるのではないかと思います。逆に自分が決められることが極度に制限されていたり、人や組織のルールに干渉されて思うような仕事ができず、やらされていると感じる度合いが大きいとどんどんストレスがたまるように思います。

言葉にすると簡単なことですが、皆さんはローカス・オブ・コントロールはどれぐらいとれていると感じていますか?

昨日、工房にすてきなヴァイオリニストの方が来て下さり、当工房の肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラをお渡ししたのですが、これからできることをいろいろとお話下さり、その後で嬉々として楽器をお持ち帰りになられた様子を見て、見ていた私もとてもうれしい気持ちになりました!

またこの件については改めて書きますが、今日書いておきたいのは、この時に私が感じたのが、楽器とはそれを使ってさらに自由に人生を航海できるオールのようなものなのだなあということです。そして特に肩掛けチェロにはその威力があるということです。つまりローカス・オブ・コントロールをぐっと自分の方に持ってくることができる道具だということです。

時代的なタイミングということもあると思います。またさらに10年前と比べて研究が進みつつあることも関係あるかもしれません。いろいろな環境がそれを後押してくれています。

しかしに、何よりも圧倒的にまだこの楽器を弾いている人が少ないにも関わらず、ソロはもとより、アンサンブルなどでの楽しみ方が抜群に広がることが約束されるということがあるような気がします。かつて一部の人たちの中だけで理解され、とどめられていた楽器が、本当に必要な人のもとに届けられるようになってきたということです。

演奏の楽しみだけでなく、楽器の歴史、製作技法、弦について、開拓しうる楽曲などなどたくさんの楽しい付録がついてくることも私自身魅力と感じています。量産できない、コピーが意味をなさないということの意味を理解していただくのもまた楽しみです。

さて、ローカス・オブ・コントロールという主題で書いてみましたが、実際に私自身、楽器を作って売るのが仕事ではなく、皆さんのローカス・オブ・コントロールを皆さん自身にぐっと寄せていただくにどうすればよいかということをご提案することが、小さな工房ならではの仕事ではないかと思っています。楽器のご注文をいただき、時間をかけて製作することはある意味その結果に過ぎません。

どうしたら、もっと自由に、もっと楽しく、自分であることができるか?

そして、日常の意味を幸せと冒険に書き換えることができるか。

そのことを楽器作りと、楽器や音楽見る製作家の視点を共有させていただくことを通して、今年も皆さんと考えていきたいと思います。