ヴィオラを買おうか、スパッラを買おうか?と迷われているというお話がありましたので、スパッラは実はヴィオラとしても使えるという話も書いておこうと思いました。
しばらく前にチェリストの髙橋弘治先生からご指摘いただいたのですが、現在の音楽シーンでは「ヴィオラ」は、そのほとんどがコントラルト・ヴィオラと呼ばれる小型のヴィオラ(約390㎜~420㎜ぐらいの全長)に独占されています。しかし、その昔はテノール・ヴィオラと呼ばれる大型のヴィオラもあったのです。
したがって2台のヴィオラによって編成されている楽曲の場合は、1つが小型のヴィラオ、もう1台が大型のヴィオラが使われていたことは想像にかたくありません。
肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラと当工房でイタリア語名で呼んでいる楽器も、ドイツの地方では歴史的にはヴィオラ・ポンポーザ、ヴィオラ・ディ・スパッラなどと呼ばれてサイズ的には大型のヴィオラであったことが明白です。
音域的にも1つの名前のもとで、チェロ音域と、ヴィオラ音域の両方が存在した可能性があります。この点については、弦の歴史に関する一層の研究が待たれるのですが、少なくとも現状で言えることとしては、肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラは、弦さえ張り替えれば、チェロとしてもヴィオラとしても使えるということです。
それのみならず、消えてしまった大型のヴィオラの立ち位置として演奏ができるということで、まだほとんど大型ヴィオラの演奏者がいないことから、演奏家の方であれば独自のポジションを築くことができると思いますし、また愛好家の方であればご自身の参加されるアンサンブルなどにさらに豊かな低音の厚みを与えることができます。
体が大きな人しか、大きな低音豊かなヴィオラを弾けないとあきらめていた方には唯一無二のポジションが手に入るどころか、気が向けば弦を張り替えてチェロの低音まで楽しめるという1粒で2度美味しい楽器なのです。
もちろん、こぶりなコントラルト・ヴィオラがほしいという方には、今一般に流通しているヴィオラを購入されることをお勧めしますが、そうではなくなるべく低音が豊かなヴィオラがほしいのだという方には、スパッラは新たな選択肢になるのではないかと考えています。
日本人はなかなか人と違うことをするのが苦手な民族性がありますが、誰でもそれぞれに他の人にはない独自のポジションを持ちつつ、全体に貢献する時代になってきていると思います。逆に言えば、そうした独自ポジションがなければ、今後楽しく人生を生きていくことが難しい時代になってきているとも言えます。
自分ならではものがないと悩むよりも、スパッラを手に取って今すぐ活路を見出されてはどうでしょうか。(なぜかすでに独自のポジションを確立されている方ほど、スパッラのような新しいポジションを与えてくれる楽器に積極的に向き合います…きっとそうした姿勢がその人を現在の独自のポジションに押し上げたのだろうなとつくづく思います)
これを読まれてピンと来た方は、きっとご自身を変革する鍵がここにあると思います。
少しずつ製作家も演奏家も増えてきているとは言え、スパッラが普及したとしても100年はゆうにかかると思います。今、スパッラを手に取られた方はほとんど生涯その独自ポジションを楽しむことができる可能性があると私は思っています。また、スパッラは、世界を見渡してもまだまだ少ないので、スパッラ・コミュニティによる世界中の人たちとの情報交換も活発で、私も日々それを楽しんでいます。
こうしてこのブログを読んでくださる方もほんの一握りの方であることを思えば、こうしたことも皆さんがそれぞれに引き寄せたご縁ではないでしょうか。
ぜひ他の方がもたない新しい可能性を見つけてください。そして新しい可能性に取り組む果敢な姿が周囲の方に感化を与える存在になるということも忘れないでください。感化を与えられるよりも、与えるポジションについたほうが人生は自由で、喜びに満ちています。スパッラに関する情報は、当工房からシェアさせていただきます。どちらを買おうかと迷われるよりは、ぜひ、楽しい挑戦をご一緒にしてきましょう♪