歌う膠(にかわ)

2月に姫路でのワークショップで作らせていただいたホームメイド(?)膠を試用しています。

まだ試用回数が十分でなく、またいろいろな濃度で試せていないので、はっきりとしたこと言えませんが、この膠はかなり強いという感触を得ています。

膠が強いという感触は、科学的なものではなく、経験的にそう感じるというだけのものですが、いくつか根拠があります。

一つはこの膠は十分に薄められるということです。

ヨーロッパでは、少なくともイタリアでは「膠が歌う」と言い、膠がよい音を奏でる濃度まで薄めて使うことが一般的です。しかしながら、精製され、防腐剤などが加えられた日本国内で流通する膠の多くは歌うほどに薄めてしまうと強度が不足してしまうということをこれまでたびたび経験してきました。

この姫路で作った膠はその点で、昔ながらの膠と同じように歌う濃度まで薄めても十分な強度があるという感触を徐々に得つつあります。まだまだ何度も試してみないと断言はできませんが。

もう一つ、膠の強さの目安として、塗布から乾燥にかけて膠同士がお互いを引き合う強さというものがあります。この強さは相当なもので、やはり科学的な根拠はないのですが、これまでいろいろな膠を使ってきた中で、この鹿膠はかなり強いという感触を得ています。メープル(楓)材の接着時の水分による膨らみもしっかり引き寄せてくれます。

最後にこの接着力が何十年、何百年も保つかということですが、これについては経過を見ていくしかありません。

防腐剤を添加していないので、冷蔵庫に入れても、添加された膠に比べてシェルフライフは短いというのもわかったところです。しかしこれは余計なものが添加されていない証であり、接着剤として使われた時には、何百年と保ってくれるのではないかという期待を抱かせるものでもあります。