ヴィオラとしての肩掛けチェロ

新年明けて以来、心落ち着かない出来事が続いたこともあり、なかなか更新ができていませんが、一つ近況をあげたいと思います。

昨日、江戸川橋の小さなスタジオで富田牧子さんと廣海史帆さんの素敵なデュオによるバッハの小品を堪能させていただいた後で、今日は川口でヴォーカル・コンソート東京(指揮・四野見和敏さん)の演奏を楽しませていただきました。
(続く時はなぜか楽しい時が続くものです♪)

VCTの演奏会では、オーケストラのとりまとめをされてこられたチェリストの髙橋弘治先生から、肩掛けチェロをヴィオラの位置で導入してみたいとのお申し出をいただき、喜んで協力させていただきました。

肩掛けチェロはこの楽器を多くの方の耳目に届けてくださっている天野寿彦先生による演奏で、指揮の四野見さんも幕間で楽器を紹介をしてくださいました。
バロック・オーケストラの中で肩掛けチェロが入ることは国内ではまだまだ珍しいので、居合わせることができた皆さまにとっては楽しい経験になったのではと思います。

肩掛けチェロ…ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(イタリア語)と呼んでいますが、この楽器はヴィオラ・ダ・スパッラとも呼ばれた形跡もあり、チェロとしてもヴィオラとしても活躍できる楽器です。

何より、現代ではほとんど忘れ去られてしまったテノール・ヴィオラのポジションを思い起こさせてくれる繊細さもあわせもつ楽器だと思っています。

元来音楽において中心的な役割をはたしていたヴィオラという楽器は、現代において普及している小型ヴィオラ(コントラルト・ヴィオラ)より、大型のテノール・ヴィオラがもともとは主流であったのではないでしょうか。

古典派時代においてもまだその流れはあったのではないかと思うのですが、クラシック音楽の音量が増大する中で、テノール・ヴィオラはいつしか姿を消してしまったようです。

このような音楽会を契機にさらに肩掛けチェロが、ヴィオラパート(特に2台のヴィオラが入る楽曲の1つとして!)を担う機会が増えるとよいなと願っています。

テノールのかそけき響きの役割がふたたび認められるときに、はじめてまた音楽も作曲者たちの響きに近づくような気がします。