オランダのヴァイオリン製作者、ディミトリー・バディアロフさんがFacebookにバロック・ヴァイオリンにまつわる迷信(?)について書いていましたので、ご紹介したいと思います。
バディアロフさんは3点を挙げています。
その迷信とは、バロック・ヴァイオリンは、
1. 弦が細いこと
2.楽器構造が弱いこと
3.常に低いピッチで調弦されていたこと
です。
弦については、ナポリに見られた382Hz やフランスのTon d’Opera 392Hz でさえ、弦が切れる寸前までテンションがかけられていました。となると、ヴェネツィアの440Hz やボローニャの 465Hzなどはどれだけギリギリまで弦が張られていたか想像するのがこわいほどです。
例えば第一弦のE線を見てみると、当時は3つの羊腸を撚り合わせて作っていました。したがって弦はとても太く、0.65mm〜0.73mmあったと考えられています。パガニーニがE線に4本の羊腸を使い、可能な限り細く作るよう指定して(0.71〜0.73mm)いたことも知られています(!)
そして、これらのハイテンションの弦に耐えられる構造にするには、実はモダン・ヴァイオリンよりもバロック・ヴァイオリンは頑強な構造をしていなければなりませんでした。
時代を経るにつれて、クレモナの名器などを含むバロック・ヴァイオリンが薄く削られてしまった様子は、18世紀終わり頃の稀代のコレクターとして知られるサラブエ伯爵の手記などからも伺えます。
バディアロフさんの指摘されるバロック・ヴァイオリンの姿、皆さんの想像されるバロック・ヴァイオリンとは異なる点もあったのではないでしょうか。
当工房でも、構造からバロック・ヴァイオリンはモダン以上にしっかり作ります。もちろんしっかり作りながらも、豊かに鳴ることは最低条件です。(※パガニーニはやや例外的な存在なので、必ずしもそれには従いませんが)
ぜひ皆様にもバロック・ヴァイオリンの真骨頂を味わっていただきたいと考えています。今いただいている肩掛けチェロなどのご注文に一区切りついたら、来夏には当工房でもヴァイオリンを作りたいと思います♪
もちろん、バディアロフさんのヴァイオリンに興味がある方も当工房を通してコンタクトをとっていただくこともできます。お気軽にお声がけください。
(写真はバディアロフさんの最近の楽器)