今日は武蔵野音楽大学の楽器博物館にお邪魔し、ピッコロ・チェロと呼ばれる現代一般的なチェロから見ると非常に小さいサイズのチェロを調査、採寸させていただきました。
この楽器はAntonio Gragnaniというイタリアの製作家のラベルがついていますが、外観から見てもGragnaniではないと思われます。ドイツ〜ボヘミア辺りの楽器にGragnani名のラベルをつけ、特徴の一つと言われるボタンやエンドピン付近の焼印をつけたものという印象でした。バフリングも紫外線を当てて確認しましたが、ぐじらヒゲではなく染め木でした。
しかし、Gragnaniではないとしても、人々の音楽の歴史の中で、5弦にセットされたチェロということで調査のしがいはありました!残念なのはもはやこの楽器の来歴が博物館の方にも分からなくなっていることでした。せめていつ頃までどこで使われていたということが分かればもっとおもしろかったのですが…。
それでもなお、興味深い点は尽きず、今後サイズの違うスパッラを作っていくための参考になる点はいくつもあったので、それらを写真に収め、採寸もさせていただきました。Gragnaniの洗練はないものの200年以上の古い楽器であることは間違いなかったためです。ネックのみ50~100年程度で、後からつけられたものというのが私の見立てでした。
こうした調査や採寸作業は演奏者の方からはほとんど見えない地味で地道なものですが、検証を重ねて、情報を増やしていくことで、演奏者の皆様に提供できる内容が深めていくことができます。
今日は時間の関係でこれ1台でしたが、また遠からず別の楽器も調査させていただき、これから作っていく楽器の参考にさせていただきたいと考えています。
武蔵野音大の博物館は移転準備中の難しい中、調査の場所を提供いただきました。責任者の守重様はじめ関係者の方々にこの場を借りて御礼申し上げます。
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