ストップレングス195mm??

工房作業ができない夜は次の楽器のための設計をしていることがあります。

昨晩も新しい楽器設計を試みていました。夜は周りも静かなので、設計をする際に静かな中で音を聴けるということもあります。

現代の弦楽器製作においてはポスターの写真を板の上に貼り付けて、元型を作り、「ストラディヴァリ○○年の楽器をモデルにしました」と謳う場合が多くあります。

これは昔の名人を目指してよい楽器を作るためでもありますが、実は一方でプロポーションを測って楽器を一から設計することが久しく忘れられてしまったためでもあります。

設計法がないため、原寸大のポスターから写し取って作ったり、実際の楽器を採寸して写し取る以外に型を起こす方法がなくなってしまったということです。

近代的ないわゆる機械製図を使ってそれぞれの人のセンスで作図する方法もありますが、これも一見きれいには描けますが、伝統的な音に基づいたプロポーションとは切り離されている場合が多いのが現実です。

しかし、そうした歴史が長く続いた中でも、ヴァイオリンの場合、ネックの長さが130mmだとすると、駒が表板に立つ位置(ストップレングス)は表板の端から195mmになり、2:3の関係になるという原則は残されてきました。

問題はこの130mmと195mmをスタンダードとする設計がフルサイズのヴァイオリンの場合、楽器全長や横幅とは無関係に適用されることが多いことです。

ヴァイオリンの音響箱の全長は355mm±2ぐらいのことが多いですが、仮に355mmの楽器全長で、振動弦長を328mm(130+195=325の直線距離が実際の弦長は+3mmほど長い)とすると、ストップレングスはプロポーションをとると196-197mmに落ち着きます。

実際に昔のクレモナの楽器を見るとそれぐらいの長さのストップの楽器が非常に多くあります。

(ここでは便宜的にメートル法を使って説明していますが、本来はプロポーションがベースとなっている話です。)

ただ、実際に市場で売るとなると、ストップレングスを195mmにしてほしいというお店の要望に出会うことは珍しくありません。弦長が同じであれば、楽器の持ち替えもしやすいというのが大きな理由です。

ストップを195mmにするには、少し小ぶりな楽器にしなければいけませんが、プロポーションを崩してしまうよりは、よいのではないかと考えます。

そこで今回は195mmのストップが全体のプロポーションとのバランスでとれるように配慮し、楽器の鳴りを犠牲にしないモデルを起こしてみたいと考えました。まだ試行錯誤していますが、うまくいけばいずれ型に起こしてご覧に入れたいと思います。