

昨日は、加我悠さん、疋田櫂さん、成田寛さん(ご夫妻)という素晴らしい肩掛けチェロを演奏される方々が当工房に集まり、J.C.Hoffmannのモデルによる肩掛けチェロ(チェロ・ピッコロ、もしくはスパッラ)の検証と、小型バス楽器にまつわる様々な意見交換をさせていただきました。
たくさんのことがあり、特にHoffmannモデルの検証については非常に興味深かったため、後日改めて投稿したいと思いますが、今日は1点だけ皆さんと話する中から書いておきたいと思います。
それはスパッラとチェロという同じ音域の楽器を二分して考えるのはあまりに単純過ぎ、もはや古いとさえ言えるかもしれないということです。
私はよく「スパッラ(チェロ・ピッコロ)のための曲ってあるのですか?」という質問を聞かれることがありますが、多くの場合、そうした質問の背景には「チェロのための曲は沢山あるけど」という考えが基になっています。
しかし、チェロとは何でしょうか?実はチェロ、殊にバロック・チェロというスタンダード化された単一のモデルの楽器は存在しませんでした。チェロというくくり(ヴィオローネより小さな巻線のある低音楽器)の中に、様々な種類が存在し、もちろんスパッラもその一つであったと考えられます。
つまり、チェロの曲と言っても、実は我々が今日想像するようなスタンダード化されたチェロの姿であった保証はまったくないことが近年の研究で少しずつ明らかになりつつあるため、実はスパッラに限らず、ごく限られた地域と時代にしか使われなかったサイズとモデルと奏法の楽器が沢山あったということになるのです。
ピッコロ・チェロ(スパッラ)はそれでもまだ3台以上現存するのでまだいい方ですが、姿を消したバス・ヴァイオリンの類は無数にあったと思われます。少し違いますが、ようはアルペジョーネのような消え去った楽器が、チェロという括りの中でいくつもあったということです。
したがってもはやスパッラとチェロという二分構造でこれらの低音楽器を論じるのは、あまり大雑把過ぎ、的をあえて外すようなことになってしまう危うさがあることはどなたにもお分かりいただけるのではないかと思います。
ほとんど1台だけ作られ、その地域だけ、時代だけで行われた演奏方法までを全て再現するのは不可能であることから、私自身はどの曲をどの楽器で弾いても、今日においては問題ないと思うのですが、少なくとも二分するだけで安心してしまうような狭い視野で論ずることはやめたいと思うのです。
現代において使われてきたスパッラという呼称もしたがって、もしかすると古くなりつつあるのかもしれません。私自身も最近はチェロ・ピッコロ(violoncello piccolo)という名称の方がすっきりする気がしています。
けれども総じて、こうした複雑さは、わるいことではなく、混迷に向かうというよりも当時の自由さをさらに感じられる方向に向かっていると私自身は感じています。
他にも書きたいことは沢山あるのですが、いずれ今進行中のプロジェクトの中で、疋田さんのような次代の素晴らしい演奏家が新たな視点をまとめてくれるようにも感じています。
昨日お集まりの皆様、本当にありがとうございました!引き続きの意見交換を今後もよろしくお願いいたします!
