演奏家を目指す方々が購入すべき楽器とは〜買い替えをどう考えるか

昨日、ドイツにいる同業者(弦楽器技術者)のとビデオ通話で話をしていた中で、楽器と演奏家を取り巻く1つの課題を知りました。今日はそのことについて少し書いておきたいと思います。

今回知った課題とは、日本国内で楽器を購入された演奏家の方が、その後、留学や就職で渡欧されてから、いざ楽器を買い替えたいと考えた時、日本国内で購入をした価格があまりに高過ぎ、買い替えができないという問題でした。非常に多くの方がこれによって苦労されており、技術者としても悩んでいるそうです。

予め断っておきますが、私は日本国内の価格が高過ぎるということを非難したいのではまったくなく、どうしてそのような問題が生じるのかということを楽器の国内販売業者と渡欧された演奏家の方々、それぞれの立場に立って考えてみたいと思ったということです。

私自身は基本的には、文字通り製作家として、楽器の売買はあまり多く行っていないのですが、お客様からご依頼を受けて海外の知己を頼りに楽器を探してくることは時々あるため、一緒に少し考えてみたいと思いました。

また、これから楽器を買い換えようと考えている方、演奏家を目指す方にはこの機会にご一緒に考えていただければと思っていますし、楽器の販売者と演奏家の双方が納得できる理解をもつことで、長い目で見てよい循環と発展があるのではないかと考えています。

まず、基本的なことですがヨーロッパでヨーロッパの楽器を購入価格と、日本国内でヨーロッパの楽器を購入する価格は異なり、日本の方が高くなります。

これは当然のことですが、日本にヨーロッパの楽器を持ち込むにあたり、ざっと考えても下記のような経費がどうしてもかかるからです。

・ヨーロッパにおける楽器の選定や鑑定費用

・ヨーロッパから日本への送料・関税

また、無事国内に入ったとしてもおおよそ高価な楽器は毎日の食材のようにどんどん売れるわけではありません。楽器によっては仕入れてから何年も経ってからようやく相応しい奏者に巡り会うこともあるでしょう。そ

のため、国内に入ってからの下記のような経費がかかってくることは容易に想像できます。

・販売されるまでの保管に関わる費用、保険等の対リスク費用

・販売店の地代家賃、人件費等々

・広告宣伝費用、営業経費

非常に大雑把ですが、こうしたことが当然上乗せされる必要があり、その上で販売者の利益も最終的には載せられなければ楽器店や楽器販売業者にとってはリスクがあり過ぎ、とてもやっていけません。

こうして多少高価にはなるものの、ヨーロッパにある夥しい数の楽器の中から、ある程度選ばれた楽器が国内に入ることで、演奏者は渡欧の労苦なく楽器を国内でさらに選べるというメリットを享受できるようになります。

こうしたことを踏まえると、日本の価格がヨーロッパより高価にになることは、適正な必要があってのことであると考えられます。(もちろん、どれだけの利益・手数料を販売者が楽器に載せるということによって適正にも、不適正にもなりうることであることは抑えておくべきであり、ここが一つ肝になるところですが…)

これは逆の構図で、日本のものがヨーロッパで売られた時にも同じようなことが発生するので仕方がないことではあるのですが、演奏家の場合、活動場所が人によっては各地に渡り、楽器の買い替えの必要が生じる可能性もあるため、そこに支障が生じるとうまく循環しなくなってしまいます。

しかし、一方で国内を見ると必ずしもこうしたことが問題にならないこともあるわけなので、演奏家・愛好家のタイプによって、少なくとも2つのケースがあることが見えてきます。

1つは、海外での活動を予定せず、あくまで国内で演奏を楽しみ、必要であれば国内で買い替えを行っていくというケース。この場合、諸費用が上乗せされた国内価格はあまり問題にならず、国内で購入するメリットを存分に享受できるかもしれません。

もう一つは、現在は日本国内にいるが将来は海外で活動をしたり、海外で買い替えをする可能性がある演奏家のケースです。この場合は諸費用が上乗せされた日本価格では、海外では売ることがまずできず、困るようなことになることも考えられます。

つまり、日本国内ですでに選ばれた中から楽器をさらに選定して買えるというメリットは、海外で買い替えをする可能性がある演奏家にとっては逆に将来におけるデメリットになってしまう可能性があるとも言えます。

では、将来海外で活躍したり、海外で買い替えをする可能性がある演奏家の方々はどのような楽器購入をしたらよいのか。

これについては書き始めるとまたさらに長くなってしまうので、いずれ別に書き足してみたいと思いますが、差し当たって今日の時点では、ご自身の将来展望によって楽器購入にもいくつもの選択肢があり、よほどの潤沢な資産がない限りは、目先に惑わされると先々困る可能性が生じることがあるということを意識するだけでもだいぶ違うのではないかと思います。

とは言え、学生の皆さんが自分で楽器を買うことはほとんどなく、ご両親やご家族が出資をされることがまずほとんどだと思いますので、そうした演奏家をサポートされる方にこそこうしたことが少しでも届くとよいなと考えています。