昨年末から修理や調整の対応に忙しく、製作の投稿がほとんどできていませんが、年末年始にかけては、バロック弓の製作を行ってきました。
もう何本か作らねばならないのですが、ひとまず先ごろ納めさせていただいた弓の様子をこちらにも掲載しておきます。
普段は、凄惨な密猟を嫌い、象牙を使うことはないのですが、今回は、お客様のご家族の古い遺品を転用してほしいというご要望をいただき、それならばということでご家族の思い出を身近に置いておける形にして差し上げようと、フロッグやボタン、またここに写真はありませんがモダン弓のチップ作りなどに活かして、納めさせていただきました。
(元素材の大きさに限りがあったため、フロッグなどはギリギリ切り出して写真のサイズでした。フロッグが少し小さめなこともあり、バランスをとるためにいくつかのサイズ違いのボタンを試みました)


また、象牙を以外にも、河馬の牙や水牛の角を使ったボタンも作らせていただき、同時に納めさせていただきました。

これらはすべてクリップインと呼ばれる方式のアジャスターを持たないバロック弓ですが、素材やデザイン違いのボタンを付け替えることで、バランスや演奏感、ひいては音も変わるというおもしろい試みです。
お客様にも大変喜んでいただき、おかげさまでたいへん気持ちのよい年始となりました。
このアイデアを教えて下さったのはいつとお世話になっているバロック・ヴァイオリニストの天野寿彦先生ですが、今回のご依頼はアマチュアのチェリストの方からいただきました。
一つの弓でも、その日の気分でバランスを変えて、右手の位置を変えてみたり、変化を楽しむことができます。
象牙は基本的には今後も積極的に購入してまで使う予定はありませんが、素材は他にもいろいろとあるため、ボタンの作成はご要望に応じて取り組んでみたいと思います。弓をご注文の際に合わせてご相談ください。
と申し上げつつも、なるべく早く楽器製作に戻らなければと焦る年初です。お待ちいただいている皆様に1日でも早くお届けできるよう、引き続き鋭意努めてまいります。