
Tonight one of my violoncello da spalla has played by amazing violist Narita Hiroshi on a concert of Bach Collegium Japan which celebrate 300 years anniversary of Bach’s cantata.
Thank you for everybody who accept this big challenge!!
今夜はバッハ・コレギウム・ジャパンのコラールカンタータ300年を記念したプロジェクトの4回目を聴かせていただきました。

バッハのカンタータが演奏されたのが300年前、さらにルターが元となるコラールを描いたのがさらにその200年前という節目、このプロジェクトがそこに関わる多くの演奏家の情熱の賜物であること覚え、また今回は当工房の肩掛けチェロがBCJの舞台にのるとあって、とても楽しみに行ってきました。

後半前の幕間に、監督の鈴木雅明さんがカンタータの説明と共に、ヴィオラ奏者の成田寛さんが今回初めてヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(ヴィオロンチェロ・ピッコロ)に取り組むが、これがデビューとなると紹介してくださいました。
また様々な側面から、当時バッハが(ヴィオロン)チェロ・ピッコロを横持ちの楽器を指していたことを確信しているということを短い時間の中で、いくつかの理由を元に説明してくださいました。

今回は成田さんにとって、文字通り初挑戦であり、冒頭ストラップがうまく肩にかからないなどのハプニングもありましたが、『備えをなせ、我が心よBWV115』の中で、トラヴェルソのソロに寄り添う趣ある演奏を聴かせてくださいました。
未だ誰もマニュアルを持たないこの楽器に挑戦してくださった成田さんには本当に感謝しかありません!
一方楽器製作者としては、このサイズのホールで聴くことはほとんどないため、手放しで喜べない楽器の課題も感じ、ほぼ完全なバロック仕様の楽器を現代のコンサートホールで弾くということについては考えさせられました。
今回、成田さんはヴィオラとスパッラを同じ曲の中で持ち替えで演奏されましたが、ストラップを使う楽器の特性上、持ち替えが言葉で言うほど簡単ではなかったことも見てとれました。
楽器の音は、ホールの奥まで届くものではありましたが、ストラップの調整がうまくいかなかったせいか、2つの楽器のガット弦(しかも一方は5弦)の調弦を保たせる難しいのせいか音程感にやや不安定さを感じたのと、満席の大ホール内でどのような音質・音量で聴こえるかということの情報が奏者にも楽団にもまだない(当たり前ですが)ことを感じました。
成田さんは誰しも認める一級の素晴らしいヴィオラ奏者であり、工房で聴かせていただいた時も、音程のずれを許すようなことはありませんでしたが、今回の演奏ではスパッラの掛け方や長さの問題、初めてということによる奏者の緊張、持ち替えによる調弦の問題、ホールでの聞こえ方のデータがなかったことなどいくつかの不安定な要素が重なったようにも感じられました。
もちろん弦についても、まだ選択肢の少ないスパッラ用のガット弦の問題を改めて考えさせられました。
もちろんこうしたことはすべて私の職業的な聞き方で、バッハコレギウムジャパンと、成田さんがこの「横弾きのチェロ・ピッコロ」という未解明の難題に比較的短い期間の準備でチャレンジして下さったこと、また実際の曲の中で、トラヴェルソのソロや大きなチェロとの響き合いを本当に実現してくださったことに比べればごく些細なことではあります。
裏を返せば、成田さんの素晴らしいヴィオラぐらい、今後演奏会やホールにおけるスパッラのデータや経験値が積み重なっていくことで、さらに一体感のある演奏が実現されるのではないかと楽しみにもなりました。
終演後には、東京公演の指揮を務められた鈴木優人さんとも少しお話をさせていただき、よい機会をいただいたことを改めて感謝しました。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどのおそらく当時から完成されていた楽器群がある中で、なぜバッハがわざわざチェロ・ピッコロを入れたのか。
マッテゾンが、ストラップで支えるこの楽器ほど低声部を明瞭に演奏できるものはないと書いたその楽器はどのように実際弾かれていたのか。
まだまだ歴史に隠されたものがあるように思います。
今後も、地道に、コンサートホールと演奏者の手を借りながら、この楽器の本当の姿を探究していきたいと改めて思いました。
喜びと緊張、ほんの少しアドベント(待降節)を先取りした感謝の夜でした。