

バロックヴァイオリンのための弓を初めて作りました。
当工房が弓専門工房ではなく、バロックヴァイオリンのための弓材として代表的なスネークウッド を在庫していないことからヴァイオリン用の弓の製作はしてきませんでした。
専門工房ではないから…というのは半分言い訳であり、バロック時代には楽器製作家が楽器も弓もすべて作っていたので、作らない理由は本当はないため、今回手がけることができてよかったです。
スパッラ(肩掛けチェロ)や大きなチェロ用の弓をいくつかの作らせていただく中で、ヴァイオリン弓の着想が広がってきたため今回自主的に着手してみたものです。
ドイツ・ニュルンベルクのGermanisches Nationalmuseumに収蔵されているJ.S.Bachと同時代のものとされる黒檀弓をデザインのベースにしました。
特徴的なヘッドのデザインですが、この弓に限らず、ほとんど同じモデルの弓が他にも収蔵されていることから、当時のデザインの一つとして捉えてもよいのではないかと考えています。
ただフロッグのオリジナルは、私がふだんスパッラ用に作っている弓よりもさらに高さがあるため、正直なところほとんどの演奏家には弾きにくいものになってしまうのではないかと考え、あえてより低く、弓毛とスティック(竿)が近いものをデザインしました。どう考えてもこの方が操作性はいいはずなのですが、歴史考証という意味ではいずれ高さのあるものもどこかで作って試せればと思います。
現代の音楽環境で日常的に使っていただける仕様とはどのようなものだろうということを考えて作りましたので、お客様に試していただくのも楽しみです。
この弓はひとまず今週末に長野に持っていく予定ですが、その後の予定はまだ決まっていないため、持ち帰れる場合はまたお知らせしたいと思います。