昨日は、丹沢広樹先生と天野寿彦先生とともに、実は小田原の弓工房アトリエカマタのオーナーでもある鎌田悟史さんがご自身で製作された弓を携えて肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの試奏にいらしてくださいました。
鎌田さんは私もインスタグラムでフォローをさせていただいていますが、すばらしい弓の製作と修復技術をお持ちの方で、いずれ私もバロック弓を注文したいと思い、お互いの情報交換も兼ねておいでくださいました。
まだ私自身、「これがスパッラの弓の決定版だ!」というものはなく、試行錯誤の連続であり、やればやるほど演奏家の方によっても好みが千差万別であるということが分かってきているのですが、それでも何度も失敗を繰り返して弓を作るうちに、おおよそこんな感じの仕様で弓を注文できるのではないかという範囲を感じられるようになってきている部分もあります。
昨日、鎌田さんのご意見をいただく中で、やはりそうか!と思ったことがあります。弓の材料として、私が使っているイペ材料について、スネークウッドよりも比重は軽いものの明るく柔らかい音が出しやすいと感じていたことについて、鎌田さんも同様のご意見をもっているということでした。実際に鎌田さんもイペ材で作ったヴァイオリン弓をご持参くださっており、試奏された丹沢先生も天野先生もその弓によい感触をもっておられました。
実はスネークウッドは非常に手に入りにくく、またその中でも質の良いスネークウッドはますます手に入りにくいという状況があり、その点をどのようにすべきかずっと考えてきました。またエキゾチックな材料ということで、おそらくは昔から王侯貴族や一握りの有名ヴァイオリニストなどしか持っていなかったのではないかと想像することから、はたしてスネークウッドが肩掛けチェロに合うのかというのがいまだにわかりません。
この春にバディアロフさんのスネークウッド弓も弾かせてもらい、すばらしいは思うのですが、いかにスネークウッドと言えども万能ではないと感じるのです。特に良質のスネークウッドが入らないところを無理にスネークウッドで作ってしまうとただの硬い、重い、弓になってしまうということもあります。欲を言えば、スネークウッドの弓ともう少し低音に温かみを与える音の出せる弓を2本持っていたいと感じてしまいます。弓はものすごく高価であることはまれなので2本以上持つことがやはり現実的な選択なのかもしれません。
イペ材そのものは当時は使われていなかったものなのですが、私個人としてはヒストリカルにこだわるよりもどうしても現代の環境を持続可能なものとしていきたいということを重視しているので、ヒストリカル(歴史的)に使われてきた材料に注目するとともに、現在何が使えるかということも探り続け、提案していきたいと思います。
イペもいろいろな種類があり、鎌田さんはそうしたこともにも注目されて材を選び製作されている様子が伺えました。おそらく17~18世紀の楽器職人たちもイペ材が手に入ればきっと弓に使っていたのではないかと思います(バロック時代は楽器職人と弓職人は分かれていませんでした)。また、当時は身の回りにあった様々な木材を使い弓が作られてきたことが分かっていますので、いずれそうした材料にも挑戦してみたいと刺激を受けました。
国内でバロック弓を作られる製作家の方は決して多くはないので、興味のある方はぜひアトリエカマタに相談されてみることをお勧めしたいと思います。私もよりいっそうコンセプトを固めて、鎌田さんに相談・注文できるように頑張りたいと思いました。
鎌田さんとのコラボレーションを楽しみにしています!