90%は演奏家が作るからこそ

音楽の音のほとんど全ては演奏家が作ると私は考えています。楽器ではなく、演奏家です。

そのためあまりに高額な楽器が、それがなければ演奏ができないかのように語られたりすることには常に違和感を覚えます。よい言い方ではないかもしれませんが、そのような言い方で喧伝されるとついつい裏があると考えてしまいます。

高額な楽器や、古い楽器がいけないということではなく、どのような楽器であっても、そこから出てくるのはその人自身でしかないので、過去にどのような偉人がその楽器を使っていようと、音楽をつくるという点においては、演奏家は常にゼロに立たされる仕事だと思うのです。

高額な楽器や古い楽器が果たすブランディングや魅力はある程度大事だと認めますが、それが場合によってはあまり音楽に関係のないことであるケースも多くあることは、ずいぶん多くの方も分かっているはずです。

また、高額な楽器につきまとうリスクがあるとしたら、清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入しても、それが後からベストなものではなかったということを知らされることが珍しくないということです。それだけの努力をして、多くの場合は家族をも巻き込んでも、演奏家はゼロから音を紡ぎださないといけません。残念ながら多くの場合、より良く鳴る別の新しい楽器を購入しないといけなくなります。

音楽において、そのほとんどは演奏家が作り出すものであるからこそ、楽器は演奏家の本当の意味での努力を支えるものであったらよいと思います。

ただ高額な出費をすれば努力をしたことにはなりません。そのようなことはお金がある人なら誰でもできるのです。本当は誰もそのことを分かっていると思います。

演奏がすべき本当の努力は誠実な楽器店や、ディーラーや、営業マンや、専門家や、あるいは製作家を見つけることと、その彼らと同じぐらいの知識を身につける(相手が本当に専門家なら、全て教えてくれます)ことではないかと思います。名前に惑わされず、ラベルに惑わされず、〇〇らしいという言葉にまどわされず、正面切って学ぶことが自己防衛にもつながりますし、知識を深め演奏家自らが専門家としての中身ある足場を築くことにもつながると思います。そして、演奏をする時にはそんな知識など1つも思い出さずに、ただひたすら音楽に集中することではないでしょうか。

製作家にも演奏家にも学び続ける謙虚さが必要で、それがあれば、少しずつですが霧も晴れると思います。

すべてを知りうる人はいませんが、後から知らなかったことを知り、裏切られたと思うか、これだけ勉強をしてきたのにまだ知らないことがあったのは仕方ないと思えるかは大きく違うとも思います。

このブログも営業のために書いています。そのため、そのことを分かって読んでくださっていると思いますが、製作家にしかできない努力は続けることで、他では得られないようなことを皆さんに提供していくのは自分の使命だと思っています。そういう木の葉のような一歩一歩が小さな工房やお店で重ねられて、やがていつかは大きな森になるのだろうとも夢想しています。