山本成さんの点検と試奏

Today I had a visit of a talented violist Naru Yamamoto from Germany, a disciple of the great violist Nobuko Imai.
He came for inspection of his baroque viola. And of course he tried violoncello da spalla as well!
It is always a wonderful experience to meet a young brilliant musician! As J.S.Bach lover he demonstrated a great potential of beautiful bass.
Thank you Naru for today’s encounter, I hope to meet you again in next occasione!

今日はドイツ・フランクフルト音楽大学に学ばれる素晴らしいヴィオラ奏者の山本成さんが工房にお越しくださいました。

バロック・ヴィオラの点検のためでしたが、かねてより関心を寄せてくださっていた肩掛けチェロ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)も試奏してくださいました!

まだ慣れないとお話しされたながらも、ものの数分もしないうちに、ご本人も大好きだとお話しされていたバッハの無伴奏チェロ組曲の数節を見事に聴かせてくださいました。
これから表現者としてのキャリアを発見しようとする若き演奏家に出会えることは本当に心躍ることです。

また、山本さんとお話をしながら、国内外に関わらず、若い演奏家の方々が安心して使えるバロック仕様の楽器を見つけることの難しい状況を改めて感じました。

これは製作家や技術者のほとんどの初期教育が、市場のマジョリティであるモダン仕様の楽器をベースとしているからでもあり、ある面仕方のないことではあるのですが、それだけに安心して使い続けられる楽器を供給する使命が、専門家にあることを考えさせられました。

私自身もずっと試行錯誤を繰り返してきましたが、モダンの楽器を専門とする製作家がバロック仕様のヴァイオリンやヴィオラ、チェロを作ると、どうしてもモダンの奏法や、常識が無意識にも前提にきてしまいます。

物理学的にどうしてそうなるのかは、よく分かってはいないのですが、そのような前提で楽器を作って、裸ガット弦を張った場合に文字通り変な鳴り方をしてしまうことが、割とよくあるのです。おそらくは必要な部分の木を削りすぎてしまうのだと思います。

以前ご注文いただいたお客様が、私の楽器を試奏されて、注文の決め手となったとお話しされていたことと、今回の楽器の点検で見えたことも図らずも同じポイントでしたので、今後も検証を続けてみたいと思います。

交換可能なパーツの調整で改善できることにも限界があるため、どれだけ優れたモダンの製作家でも、バロック仕様のオリジナル楽器を研究もせずに見様見真似で作ってしまうと問題が生じてしまいます。

海外でもいかにバロック仕様の楽器に関する製作の専門家が少なく、楽器選びに演奏家が苦労をしているかということを改めて感じました。

これから山本さんがどのような道を歩まれるのか、一人の音楽ファンとしても楽しみですが、私自身も在野の探究者として、皆さんが探しておられるものを提供できるよう一層がんばりたいと思います。

山本さん、本日はありがとうございました。またご帰国の機会に点検やコンサートなどでお会いできることを楽しみにしております!