




今年はあまりに忙しく(自分でしてしまい)、9月以降はほとんどコンサートにも足を運べない毎日でした。
そんな中で、工房から30分のところにある武蔵ホールさん(すてきなチェンバロがしっかり調整・調律されてはいっていることでも知られます)で天野寿彦先生門下生+αの恒例となる発表会が開催されました。
今年は、当工房の肩掛けチェロ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)を注文してくださった疋田櫂君と天野先生によるスパッラのデュオがあるということで、とるものもとりあえず足を運ばせていただきました。
そして、なんとそのデュオの素晴らしかったこと!演目はヴィヴァルディのチェロソナタNo.1 RV47 からLagoとAlegroでした。
本当にこの楽器を作ってよかったと思うと同時に、スパッラという楽器が使える楽器であるということは疑いの余地がなくなりました。
そして、素晴らしかったのは、お二人以外にも多くの生徒さんがスパッラ助演付きの演奏をされていたことです。
T.Albinoni、H.i.F.Biber、G.F.Hendel、N.Matteis、A.Corelli、J-B.Senaille、F.A.Bonprti、などなど、手元のプログラムで見ると21組(奏者は31名だったと聞きました)中、半数以上にもなる13組はスパッラの助演を希望してくださったのです。
発表会は盛況で昼過ぎから、リハーサルを含めたとはいえ、夜の21時まで続く盛況ぶりでした。
采配を振るわれた天野先生、本当にお疲れ様でした。
国内で、当工房のスパッラを2台使っていただいてチェロ・ソナタが聴けるという至福。
同時に、私自身は、スパッラは特別な楽器ではないと思えるようにもなりました。
もちろんスパッラを本格的に研究している工房はまだほとんどなく、作っているところも非常に限られますが、こうした状況は今後改善されていくと思います。
そして、スパッラが、大きなチェロにとって代わるものではなく、同じ音域をもつ別の楽器として共存できるものであることも確信しました。
一昔前までは、大きなチェロに比べて音量が足りない、音質がわるいなど酷評が多かったものですが、ヴァイオリニストやチェリストの数ほどスパッラ弾きが増えていけば、その評価は必ず変わっていくことは想像に難くありません。
天野先生と疋田君はその忘れ難い先鞭をつけたと言えると思います。
スパッラはいろいろな意味で控えめな渋い楽器です。
サイズはもちろんのこと、音量も控えめ、お値段もヴィオラとチェロの間で控えめです。また音色は5弦あるからこその、4弦の明瞭な響きとは異なる、渋さを私は感じます。
そして、それがスパッラの魅力なのだろうなと感じるこの頃です。
来年からはさらにスパッラを”普通の楽器”にすべく、私の方からも気になるアーティストの方や、演奏教室の先生方にアプローチしていきたいと思います。
失われたテノール・ヴィオラの声域を埋める楽器としても、スパッラはもっともっともっと注目されてよいと思います(!)
ぜひ今後も肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラとその弾き手たちにご注目ください!