スパッラの教室、コンサートでの活用

(2022年12月27日、武蔵ホール(埼玉県入間市)でに行われた天野先生門下生+α発表会の様子・一部)

昨晩、天野寿彦先生の夜まで続いた盛況著しい発表会を聞かせていただきながら、スパッラの活用について改めて考えさせられました。

私がスパッラを始めて知った15年ほど前は、スパッラに対する偏見や感情的なムーヴメントが演奏家の間で広がってしまい、研究も行き届かず、スパッラを冷静な目で見ることができない時期がしばらく続いていたように音楽ファンの一人として見ています。

しかし、時代は進み、スパッラは完全に次のステージに進みました。

先の投稿でも、天野先生と疋田君のデュオを聞き、スパッラが使える楽器であることは疑いの余地がなくなったと書きましたが、今後演奏家が増えるにしたがって、その姿がますます明らかになっていくでしょう。

スパッラを演奏家として、また教室の先生として導入をしていただくことのメリットは、実はスパッラの生徒さんが増えるということではありません。それも一面ではありますが、天野先生の教室を例にとらせていただいても本格的にスパッラに取り組んでいるのは今のところお一人だけです。しかし、それ以上に大きな影響力があるのが、今回の発表会でも21組中13組の奏者がスパッラの助演付き演奏を希望されたことではないかと考えています。

つまり、スパッラを導入することで、レッスンや在籍生が増えるという側面が大きいと私は感じます。またスパッラをもってきてほしいという他の演奏家からの要請で、スパッラを加えた演奏会があったことも聞いていますので、演奏会のお仕事という意味でも、メインでヴァオリンやヴィオラを持っていたとしても、ご活躍の場が広がると見ています。

要約すると、スパッラを導入することで、

・演奏の仕事に幅ができ、また増える

・教室の生徒さんがスパッラに限らず増える、生徒さんにとってのレッスンの楽しみも増える

・スパッラという未知の楽器を普及、探求していく楽しみがある

・スパッラの活用を模索するクリエイティブな楽しみがある

・大量生産できない仕様だから、大手ではなく個人運営の教室での活用が目覚ましい

というようなメリットが間違いなくあるのではないかと感じます。

どのような仕事でもルーティンとなってしまい、変化がなくなってしまえば、生徒さんだけでなく自分も成長を感じられなくなってしまいます。成長実感は=幸福感と言ってもよいほど、社会生活を営む上では大事な要素であることを考えれば、スパッラという楽器の未知を開拓し、楽しみながら活用してくということは、教室を運営される生徒さんのみならず、先生の精神的な活力の元になるのではと感じます。

スパッラについては、私自身もここ数年はドイツやベルギーでの調査、研究に時間を割き、またそれらをもとに実際に楽器を作ってみて、小さな修正を繰り返しながら、演奏家の演奏を通して検証をするということを繰り返さなければならなかったため、大きな前進は意図してきませんでした。

しかし、昨晩の素晴らしいデュオの演奏は肩掛けチェロが文字通り使える楽器であることを認識するには十分過ぎるものでしたし、天野先生の教室に限らず、全国津々浦々の教室でぜひスパッラを活用していただき、演奏会や発表会を気持ちよく広げていく資力としていただきたいと感じました。

何度もこのブログでも書いていますが、こうした新しいムーヴメントを活用できるのは、実は市場の成長という観点から見れば永遠に続くものでありません。そのため、今ご導入いただく方には必ず先行者利益という意味での独自のポジションが自然と与えられることも十分予想できます。

演奏家や教室の先生方は、集客や生徒募集の専門家ではない場合がほとんどです。また芸術が本分である以上、その必要もないかもしれません。しかし、だからこそ、その意味でもそうしたことにいたずらに頭を悩ませずに、気持ちよく演奏と探求を続けることで、お仕事がふくらむのであればそれほどよいことはないのではないかとも思います。

肩掛けチェロ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラにはそうした役割があるように思います。ぜひ、単に新しい楽器を増やして、教室の新しいコースを1つ増やすというようなことではなく、今だからこそできるスパッラのインパクトと未知を深掘りしていく楽しさを教室運営や演奏のお仕事に活用してみていただければと思います。

(一見、大きく見えるスパッラですが、中学生でも十分に演奏ができるということを天野先生と疋田君のデュオは見せてくれました。)

(スパッラのよいところは、あらゆる意味で控えめであること。これまであったヴァイオリンやチェロ、そしてももちろんヴィオラもスパッラの存在によって薄れることなく、新しい楽しみが加わってきます。写真は発表会の中でヴァイオリンとチェロを助演されている天野先生と武澤秀平先生)

すでに来年以降のご試奏希望のご予約もいただいており、現在作っている2台の楽器は神奈川県と京都府への納品予定ですが、まだスパッラが1台もない(!)県も多いと思います。ぜひ来年はまた一つでも多くの教室にスパッラが導入され、楽しみととともに発展されることを願っています。