格安スパッラ?by ebay

海外のフリマサイトebay で量産の肩掛けチェロ(スパッラ)が格安で販売されていました。

約46万円ということで、一般の個人製作家の作る価格の約半額〜1/4以下という価格です。

この格安スパッラ、果たして長く使えるのか?というのがユーザーの皆さんの一番気になるところではないかと思います。

私自身楽器を手に取ったわけではないので、はっきりしたことは言えませんが、まず一つ外観から推察できることは、モダン仕様で作られているように見えるということです。そのため、バロック演奏には残念ながら向かないだろうとは考えられます。

肩掛けチェロ最大の魅力の一つは、本格的なバロックからモダンに渡るレパートリーをヴァオリン・ヴィオラのような横弾きで、(チェロの音域で!)楽しめるということです。

バッハのキャリアの最後期に、時代を先取るプロトタイプ的な楽器として姿を現したという点からもご想像いただけると思います。

この格安量産スパッラは、予算がないというお客様のための導入楽器としては役立つかもしれませんが、倍音と音の広がりを大切にするバロック演奏には向かない仕様になっていると見えることから、残念ながら楽しみの半分は我慢しなければならないということになることが予想されます。

とは言え、チェンバロと同じではなくとも、ピアノでもバロック音楽が楽しめるように、このモダン仕様のスパッラが使える場面が沢山あることも十分想像できます。

問題はどちらかというと長く楽しめるのか?という点かもしれません。46万円が格安とは言え、多くの方にとってまとまった金額であることは間違いありません。46万円払ったけど、フリマサイト経由で購入したからその後のメンテナンスができず、いったん問題が生じたあとはお蔵入りになった…というような話はヴァイオリンなどでも珍しくありません。

いずれにせよ、プラスチック製のファインチューンペグを装備し、指板もテールピースも黒檀だけで作られ、モダン弦が張られているこの格安スパッラが、スパッラ演奏の人口を増やしてくれることも長い目で見れば間違いなく、その点は好意的に私自身は受け止めています。

ただ、多くの方が想像される以上にそこまで難しい楽器ではないとすると、しばらく弾いて、もっといい楽器で弾きたい!となった時に、結局はすぐまたお金を払うことになってしまうのではないかという懸念があります。これもヴァイオリンなどでもよくあることですが、さてどうでしょうか。

演奏人口が増えることは一般的には歓迎すべきことで、需要が増えることで弦の製造コストが大幅に下がってより弦が入手しやすくなれば、さらに好循環が生まれることが期待できます。量産ヴァイオリンの存在同様に業界全体を持ち上げ、普及を後押ししてくれる効果が、この量産スパッラにも期待できるということです。

一長一短ということかもしれませんが、皆さんはどのような選択をされますでしょうか。当工房でも何らかの活用の仕方がないか検討をしてみたいと思います。