小さな工夫

今朝は少々マニアックな話を(笑)

コンサートも無事に終わり、昨日は現在製作中の肩掛けチェロのf字孔のわきのフルーティング(凹み)を彫って整えていました。

とても小さなことですが、このf孔横のフルーティングは昔のクレモナの楽器などには見られたものの、同時代のドイツの楽器などには見られない特徴で、イタリアの楽器を見た目にもエレガントに見せている小さな特徴です。現代ではイタリアにかぎらずどこの製作家でもこの特徴を取り入れているため、あまり地域的な特性とは言えなくなってはいます。

私自身イタリアで学んだために、この小さな目立たない細工が好きなので必ず入れるようにしているのですが、昨年ライプツィヒで見たJ.C.Hoffmann の楽器(現在製作している肩掛けチェロの原型の楽器)にはやはりこの凹みはありませんでした。したがって、小さな目立たない特徴ですが、意識して入れているとも言えます。

(逆に今度、Hoffmannのコピーを作るときには凹みをなくしてみようと思っています)

もう一つ小さなことですが、f字孔の目と呼ばれる穴だけを先に開けた状態で表板の厚みを完成させるのも私の方法です。

f字孔の穴を開ける→f字孔わきのフルーティングを整える→表板の厚みを完成させていく→表板の厚みが9割がたであがったところでf字孔を切るという順序ですが、おそらくこの順序を採用している人はほとんど見かけません。

現代のクレモナでは表板の厚みをある程度薄くしてから、f字孔全体を切り抜いてしまい、その後で表板の厚みを整える人がとても多いです。また、私が学んだパルマやミラノの先生たちは表板の厚みを完成させてからf字孔を開けていました。これらの方法は実はどもちらも一長一短あり、何年かの試行錯誤の末に私は、上の目だけを開ける方法に落ち着きました。

こうすることで、f字孔わきのフルーティングがより自然に作れますし、もっとも大事な目と目の間の距離のプロポーションを最初に配置できるので、文献などの確証は何も残されてはいないものの、昔の人たちは案外こういうふうに作っていたのではないかと考えてたりしています。

常に歴史の深部を探りたいため、私の採用する方法はマイナーなことが多く同じ製作家の方からも驚かれることが少なくありませんが、現代の大勢を占める製作技法と異なるというだけで、歴史的な作業方法からはずれているというわけではありません。ただ、この方法はやってみると分かりますが、たとえプロポーションの原理を知らなくても、いくつか工程上のメリットがあるので、今はほとのど見かけませんがいずれより多くの人が採用してくださるのではないかなと思っています。

表板の厚みを整えたら、f字孔を切っていきます。