
(写真手前より、髙倉、神野くらら先生、天野寿彦先生、石川友香理先生)
昨日、工房の3周年を機に企画させていただいたコンサートが無事に開催されました。
新型コロナウイルスの影響がなお予断をゆるさない中で、開催直前まで実施を皆様にもご心配いただきましたが、結果的には予定してたチケットを完売し、満員御礼でコンサートを実施することができました。
お越しくださいました皆様、都合がつかずおいでになれなかったもののご関心をお寄せくださった皆様のおかげと心より感謝しております。
私自身は初めての自主企画によるコンサート実施ということで、当日まで準備や調整に動き回り、ゆっくりコンサートを堪能する余裕はありませんでしたが、閉幕後にたくさんのご感想をお寄せいただき、開催できて本当によかったと思いました。
天野寿彦先生の演奏もさえわたり、また石川先生との競演も見事でした。すばらしい演奏を聴かせてくださった先生方に心より御礼申し上げます。

コンサートを開催するにあたり、私の方でいくつかの願いをもっていました。
それはコロナ禍によって1年以上に渡って多くの公演が中止に追い込まれる中で、微力ながらも演奏家の方々に演奏の場を提供する方法を見つけていきたいということです。小さな工房に何ができるか時間をかけて考えてきました。
もう一つはこうした難しい状況の中で仕事をしながら家族を養ってこれたのは工房建屋のオーナーである神野くらら先生の大きなご理解と支援があったためで、そのことへの御礼と感謝の気持ちをお届けしたいと思ったことです。
私にとって幸運であったのは、県境をまたぐ必要もなく、また緊急事態宣言にもまん延防止重点阻止区域にもあたらないご近所に天野寿彦先生というすばらしい演奏家がいたことで、当日まで滞りなく準備を進めることができたことでした。
私にとっても開催がチャレンジであったように、天野寿彦先生にとっても今回は1つのコンサートの中で中世からバロック時代までに使われた4つの楽器とさらに多くの弓を使い分けるという非常にチャレンジングなものでした。世界広しと言えどもこのようなコンサートは見たことがありません。
こうしたクリエイティブで、文字通りチャレンジ精神なければできないような企画に挑んでくださった天野先生に改めて心からの敬意を表したいと思います。また演奏家のチャンレンジと創造性に聴衆は期待を寄せるということもひしひしと感じましたので、これを機に肩掛けチェロの普及にもますます力を入れていきたいと思いました。
コロナの影響によりお仕事を減らしている方がふえる一方で、違う形のチャンスを見出すべく挑戦を続けてこられている方もいます。天野先生も多くの生徒さんを都内や地方におもちのため、レッスンの機会が大幅に減ったとお聞きしていますが、その中でも積極的に肩掛けチェロを使って下さり、オンラインというこれまでの常識からは不便であるはずの環境の中でもバーチャル・アンサンブルなどを生徒さんが楽しめるように苦心されてきました。
状況を悲観し、こんな状況では音の妙味も伝わらないからやる意味はないと一蹴するのは簡単です。しかし、ご自身のためにもまた生徒さんのためにも、ゼロから考えてどのような楽しみを共有できるだろうかということ、これまでを前提とせず、ゼロからどのような挑戦が楽しいかと考え、試行錯誤とたくさんの失敗があったとしても、大切なものを希求し、それを形にできることは様々な時代を生き抜いてきた創造性ある演奏家の姿であると思います。そうした中に陰ながら関わらせていただいていることを大変うれしく思います。
コロナが日常となった今は、ある意味に長引く戦時中に似ているかもしれません。誰もどこにゴールがあるのか知らず、誰かがゴールを提示してくれるのを求めがちです。しかし、いつまでたってもそれが出てくる保証はありません。そうした中でも時間は止まることなく進んでいくことを思えば、どんなささいなことでも、また形を変えたことでも、日々の中に喜びを見出していけるかということを私たちが私たち自身に問うことを今は試されているように思います。
今年は当工房も国内での活動に重点をおいているため、春の関西方面への出張に引き続き、安全を見ながら、もし可能であれば昨年あきらめざるをえなかった東北方面への肩掛けチェロの普及を季節の温かいうちに企画したいと考えております。クリエイティブな表現と、新たなお仕事の可能性を手にしたいという演奏家の方がおられましたらぜひ遠慮なくお声がけいただければと思います。
日本にはいまだ肩掛けチェロの専門家と名乗る演奏家はいません。そのことだけをとっても肩掛けチェロを導入することは大きな可能性があります。もっとも困難と思えることの中に、実はもっとも大きなチャンスが眠っていると思います。他の人がやること、これまでの自分がやってきたことをなぞるのではなく、ゼロから考えるチャンスを現在の状況は私たちに与えてくれているのではないでしょうか。
次回コンサートを企画できるのはいつになるかまだ分かりませんが、二度同じことを繰り返すことはせず、またまったく新しいことに次も挑戦していきたいと思います。一緒に挑戦してみたいという方がおられましたら、ぜひ今からコラボレーションを始めましょう!
3周年を迎えた当工房を今後ともご指導・ご支援いただきたく重ねてお願い申し上げます。