ちょうど今日から個人製作家向けの製図レクチャーを実施していることもあり、レクチャーの費用対効果について製作家のディミトリー・バディアロフさんに教わったことを皆さんにシェアしておきたいと思います。(以前にも書いたかもしれませんが、大事なことなので再度書きます)
専門的なものは、レクチャーにかぎらず、書籍でも何でも非常に高価になることがありますが、かつて高価なセミナーに参加するかどうかという点で悩んでいたときに、自分の背中を押してくれたバディアロフさんの一言がありました。
それは、バディアロフさん自身が、費用・時間的に厳しいと感じるセミナーに出続けているというのですが、少し厳しいぐらい高価な方が実際には内容のいかんにかかわらず自分を成長させるから参加するのだという話でした。
最初は意味がよく分かりませんでしたが、自分が体験するにつれてその意味がわかってきました。
人はセミナーに参加するときにその費用対効果を無意識に計算します。
それは当然のことですが、その時に参加費用だけがネックになり、足を止めているのならば、それは自分が勝手に思い込んでかけている制限に過ぎない場合が多いということなのです。
そして、そのような場合に、価値を感じて清水の舞台を飛び降りる覚悟で参加できたら、安いセミナーよりも高価なセミナーの方が、多くの投資をしたがゆえに参加した本人が本当に本気になり、結果的に成果を多く出すというのです。
逆に安いセミナーや割引をされたセミナーの場合、「安く手に入ったからまあいいや」という心理が働き、結局セミナーの費用にかかわらず人々は積極的にそこで学んでことを活用しようとせず、結果的にリターンも少ないというのです。
しかし、価値があると信じて高いセミナーに参加して、実際にはその価値がなかったとしたらどうでしょうか。実際にはそうしたことがあるかは分かりませんが、参加を判断したのは自分である以上、自分の判断の甘さを悔やむことになると思いますが、それによりさらに真剣に自分の見識と判断力を磨くことに力を注ぐことができるため、結局は少し時間はかかっても必ず人はその元をとれるだけの、否、それ以上の成果を出すというのです。
これは驚くべきことですが、私自身が、自分に言い訳をしないと決めて、そのようにしてものごとにとりかかってから実際に体験してきたできごとであるため、今ではさほど驚きません。
少し厳しい言い方をしますが、演奏家であれ、製作家であれ、不勉強であると見られるのがいやなのか「結局こういうことでしょ?」という言い方をされる方がいますが、たいていの場合その憶測は間違っています。
また、遠巻きに見てだんまりを決め込んで、ふだんは話しているのにそれについては無学が露呈することを恐れて触れずに何もアクションを起こさない方もいます。しかしそのいずれも、その人が起こせたであろう革新を起こさずに人生を送っていくことになると思うのです。
辛辣な書き方をあえてしてしまいましたが、このようなことを読んで心にちくりと感じる人と、それはその通りだとまるでそよ風ぐらいにしか感じない…すでにそうしたことを当たり前に日常的に実践している方もいます。
そして、歴史を見ればその時代時代で活躍をした人たちがどれだけのリスクをかいくぐって来たかを見れば、その積極的なリスクの大きさは、実際にはリスクではなくその人の判断力と器の大きさに他なりません。
指をくわえて待つ人間で終わるか、知ったかぶりをして脅威を感じていることを隠す人間で終わるか、あるいは逆に何があっても動じずに自分の軸をもつ人になるかは外見は大きく変わらなくても、その人生の充実度は大きく違ってくるように思いますし、そして結局は成果も変わってくると思うのです。
自分がやるレクチャーやワークショップに参加してほしくて書くのではなく、なんであれば自分が価値と思うのものに飛び込まない人は、ますます難しくなる…なぜなら自分が自分に大きな価値をまず感じられていないから、と思うのです。これはあなた自身にとってのあなたを問う話です。
きついことばかり書きましたが、一方で、大変なキャリアをもつ演奏家や技術者にもかかわらず、若い人に頭を下げて質問をしたり、教えを請うことをまったく厭わない軸をもった方々も多くおられます。
バディアロフさんの講習を受けたときも、そういう人が参加者の中にはいましたし、また今回も声をかけてくださった方々の中にそうした方もおられました。そうした方々に出会うと、いつか自分もそうなれるのだろうかと背筋を伸ばす気持ちにさせられます。
今回も自分を変革しよう、今しなければいつ変わるのだろうと思えた人たちに出会えたことに感謝しています。なぜならそうしたことを決意した瞬間に人が放つ光で、いちばん勇気をもらっているのは私自身だからです。
きれいごとと思われるかもしれませんが、つまるところ人がする決意には費用対効果を必ず肯定するパワーがあると感じます。それぐらい人の決意とはすごいものです。
正直、価値を感じるのであれば、レクチャーの金額というのは必ず元がとれるのでどのような金額でも大したものではないと思います。だからこそ、一昨年のスペイン、今年のドイツへの調査旅行など、私自身も今できる学びへの大きな投資を選択し続けるのです。