読者の方からの質問~スパッラに縦弾きはありましたか?

こちらのホームページ(ブログ)を読んでくださっている読者(チェロ弾き)の方から、「スパッラSpallaのような小型のチェロは縦弾きで弾くことはなかったのですか?」というご質問をいただきました。
これまでにも何度か、他の方からもいただいた質問だったため、私からの返信のメールを一部手直しし、こちらもで紹介したいと思います。
はじめまして、
HPをご覧いただきありがとうございます。
ご存知かもしれませんが、チェロはヴァイオリンからコントラバスまでの擦弦楽器の中では、もっとも歴史的には後から現れた楽器です。
これは巻線が登場したことでできた楽器であるためですが、そのため、楽器の奏法も非常に短期間のめまぐるしく変わっていったのではないかと考えております。
したがって、残された資料をみるかぎりは、チェロ全般に関してはおよそあらゆる弾き方があったものと思われます。縦弾きもあったと思います。
ただしどれだけ今日のように脚に挟むのが一般的であったかは分かりません。
と言いますのは、ヴィオール属(ヴィオラ・ダ・ガンバ、gamaba(イタリア語の脚の意味))がある一方でbraccio(腕)で弾かれる楽器の一群としてヴィオラやヴァイオリンが発達した中にチェロが現れたので、もともとはガンバ(脚)ではなくどちらからというとブラッチョ(腕)で弾かれる楽器の一つとして認識されていたと思うからです。
したがって、横に持ったり、脚に挟まずに台に楽器を縦に載せて弾くなどの資料が残っているように脚で挟む以外のあらゆる方法があり、また時には脚に挟んでも弾かれたのではないかと思います。
具体的にどの程度の割合で、どちらの弾き方が一般的であったか、支配的であったかということについては私の方では資料不足でお答えできません。
ただ、当工房で作っているようなチェロ(小さなヴィオールの意味)の中でもさらに小さい、チェロ・ピッコロと呼ばれたものに類するものは、ほとんど横弾きであったのではないかと考えています。
なぜならそもそも機動力を重視したダイアトニック・フィンガリングによる横弾きがしやすいようにということが小型化の目的だったと考えられるからです。
つまり縦弾きがしたいのであれば、従来の大きめのチェロでも問題はなかったはずなので、わざわざ小さいものを特別に作る理由はなかったはずなのです。
結論としては、ご質問の「スパラのような小型チェロは、~」という点については、ヴァイオリンに近い形で横に持って弾くことが一般的であったと思います。
バロック時代は弦楽器奏者が吹奏楽器を奏でることもあり、演奏家がオールマイティーであることが一般的だったようです。状況に応じて楽器を持ち変えることはもちろん、どのような弾き方でも音楽を楽しんでいたのではないかと思います。
音楽の歴史の中では1つの楽器だけを演奏する専門化はそれほど昔からのことではありませんでした。
ヴィルトゥオーゾという概念もまだなかった時代のものなので、多少の慣れは必要かと思いますが、ぜひ機会ありましたら小さいチェロの横弾きにも挑戦していただければと思います!
小型チェロはまだ復活の緒についたばかりなので、ぜひ盛り上げていくために皆様からのご注文をお待ちしております!
また海外の製作仲間も適宜紹介しておりますので、お声がけください!