ドイツに行く前に大槻晃士先生の論文に目を通しておきたいと思いました。
現在はまだ公開はされていないと思いますので、詳細の掲載はできませんがいただいた論考に出張前に目を通しておくことで、現地で確認すべきことが他にないか考えておきたいと思ったためです。
大槻先生の論文の興味深いポイントとして、チェロ(伊=violonocello)よりも小さなサイズのチェロ(伊=violoncello piccolo)、すなわちピッコロチェロが存在したことはほぼ疑いないものの、そのサイズについては明確な情報が残されていないため、残された楽器や、バロック期の楽譜からどの程度のことが読み解けるかということを探られたということがあります。
ライプツィヒなどに現存するHoffmannという製作家の楽器などがチェロの音域で当時使われたかどうかという点は、二重巻き線が当時ライプツィヒにあったかどうかということが証明されないかぎり解けない問題ではあるものの、巻き線というものが弦製造者ではなく、当時は弦楽器製作者が自分の工房で巻いていたことが一般的であったことからまず資料が残っている可能性はほとんどないと思われます。
そのため、大槻先生のように演奏面から調べうることを追求してくださり、また過去に書かれたMarc Vanscheeuwijckなどの小型肩掛けチェロの存在に否定的な意見や、Eszter Fontana-Veit Heller-Klaus Martius らの最新のHoffmann 研究などを踏まえて意見を出して下さる方があるのは製作者として大変ありがたいことだと感じました。
小型の肩掛けチェロはとにかく現存する情報が少ないということは大槻先生の論文を通しても感じましたが、その一方でチェロというものの概念が現在のわれわれのもっているものよりはるかにサイズにおいても奏法においてもバリエーションに富むものだったということは改めて確信するところとなりました。
さて、ドイツもついに新型ウイルスが日本の感染者数を超えたようですが、健康管理をしっかりして準備を進めたいと思います。
大勢での移動は危険な時期かもしれませんが、誰も動かなくなってしまったら経済が停滞し、多くの方が困ってしまいます。自衛を心がけつつ、しっかり仕事は回したいと思います。