このところ、複数の方からモダンピッチ(A=440-442㎐)で弾けますか?ネックに支障はありませんか?というご質問をいただきましたので、簡単にこちらでも回答しておきたいと思います。
結論から言えば問題ありません。
弦の面から見ると、ガット弦の場合でも問題ありませんし、トマスティーク社が製作者に特注品として販売しているスパッラ弦はそもそも440を目安に作られているので、まったく問題ありません。
ネックも問題ありません。ネックについてはバロックネックはモダンネックより弱いという誤解が何故か絶えないのですが、実際にはしっかり作られた場合には物理的にバロックネックの方が太くて強いのです。
ヴァイオリン属の楽器がネックを改造されたのは、ハイポジションをより楽に弾けるようにという要求に応えるためですが、構造的に強くするためにモダンネックにされたわけではないということ知っておいていただければと思います。
実際、皆さんの周りでもモダンのネック(指板)が落ちたという話は珍しくないと思います。(もっともネックが落ちる場合は、ほかの原因がかなりの割合を占めますが)
弦については上述の通りですが、まだスパッラ奏者が少ないため、トマスティーク社の特注弦がものすごく高価であるという問題があります。今後需要が増えれば改善される余地はあると思いますが、まだしばらくかかりそうです。
そのため、昨年に引き続き、ある意味、ガットとモダン化学繊維弦の間にある弦として、シルク弦の探究を今年も進めていきたいと思います。すでに1両日中にフランスよりシルク弦が当工房に向けて発送される予定です。
ちなみにシルク弦への巻線の記録は1664年からあるということです。トマスティーク社の特注弦が高価である現状では、歴史的であり、ガットに次ぐ響きを持ちながら、湿気に比較的感じにくいシルク弦について寄せる期待は大きなものがあります。またこちらについてはリポートしたいと思います。