今週は、イミテーション・アイボリー(模倣象牙?)と呼ばれる素材で肩掛けチェロ用のフロッグを作ってみました。
このイミテーション・アイボリーはもちろん象牙ではないのですが、牛乳由来の素材で、カゼイン・プラスチックと呼ばれるもので、見た目、感触もとても象牙によく似ています。歴史は割合と古く1800年代の終わりには象牙の代用品として知られていたようだという話も聞きました。
ただその性質については実はよくわかっておらず、私の周りで知っている人もいないので、アメリカの友人に相談していたところ親切にも素材を送ってくれたので、ものは試しと作ってみました。
まだ性質はよくわかっていないのですが、これを使用することで、いくつか期待できることがあります。
1つは象牙の使用を避けることができるということです。象牙は使ってしまうと、どうしても間接的にその流通を手助けし、結局は密猟につながってしまうという感覚がどうしても消えないため、できるかぎり使いたくありません。感傷的と言われるかもしれませんが、音の改善よりも密猟を防ぎたいという気持ちの方がプライオリティが高いのです。
もう一つ期待される性質の1つが、見た目や感触が象牙に近く、それに代わるものでありながら、生分解性が高い、つまり土に戻ってくれるのではないかという点です。ただこれについては木ほどは簡単には土には戻らなさそうです。また、今のところ私に理解ができるような論文も見つかっていないので本当にそうなのかどうかはわかりません。ぜひどなたかご存知の方がおられましたら、教えていただきたいです。すべてがすべて理想通りにできているわけではまったくありませんが、基本的には環境問題も、音の改善よりも優先されるべき問題だと当工房では考えています。
ともあれ、ひとまず形になったので、次はスティックを削って、毛を張ってみて、演奏家の方に感触を確認していただこうと考えています。
黒檀などのフロッグと違い、鑿が基本的には使えないのでほとんどヤスリの作業になってしまい、作るのに時間がかかりますが、もしもうまくいけばお客様にとっての選択肢の1つになるといいなと思っています。
もちろん象牙ではないので、海外への持ち運びにも問題は生じません(!)
もし生分解性ではなかったり製造過程に問題が多いと分かったら、使用を中止するかもしれませんが…
夢は、弦楽器製作と、弦楽器演奏を、地球環境保護のリーダー的な仕事にしていくことです!音と音楽と楽しみを最大限追及しつつ、それでも環境を優先するというふうになっていくといいなと思っています。逆に言えば、環境のためには音を犠牲にすることもやむなしで、それがカッコいい(それでもなおかつ音をとことん追求しつつ…)という価値観が生まれるといいなと思っています。もちろん、限度はあるのでバランス感覚が常に大事ですが。
ということで、カゼイン・プラスチックについて、ご存知の方がおられましたら、ぜひご意見をContactよりお寄せいただけると大変うれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。