昨日、大槻晃士先生とほとんど一日中チャットで意見交換をさせていただきました。
先日こちらのブログに掲載した仮説と先生のレクチャーをベースに、様々な示唆に富んだお話をいただきました。
結果的に、先日の私の仮説を補足・加筆する必要も感じましたが、所詮は素人のかいたものなので、それをこじらせることはせず、大槻先生が論文を用意されているということもあり、その発表を楽しみに待ちたいと思います。
ただ、大槻先生とお話し、仮にHoffmannのサイズの肩掛けチェロが存在していたとしてもそれは極めて特別なプロトタイプ的なものであったのだろうという点では意見が一致したように思いました。
これを大バッハが実際に使ったかどうかという点では、無伴奏が基本的にケーテン時代に作曲されたこと、Hoffmannはライプツィヒの製作家であり、Hoffmann と知り合って小型の5弦肩掛けチェロを入手したのであれば、時代がずれる可能性があることなどから、仮に存在していたとしても作曲時点で用いた可能性は低いように私も感じました。
その一方で、6番の存在をどのように解釈すればよいかということについては、まだ複数の謎が残っているので、バッハが小型の5弦肩掛けチェロ(もしくはヴィオラ)をライプツィッヒ時代に入手したという可能性を完全に否定することもできません。
大槻先生はさらなる調査を進められていますので、最終的にどのような現時点での結論が出てくるのかとても楽しみです。
いずれにせよ、前の仮説でも書いたように、史的正当性(バッハの時代に小型の5弦肩掛けチェロが存在しえたかどうか)ということは抜きにしても、また仮にそうした史的正当性がなかったとしても、この可愛いチェロを作り続けていこうという考えに変わりはありません。
もしもこの可愛いチェロが、史的正当性がないからダメだというのならば、製作家の観点からすれば今出回って使われている楽器のほとんどがまがい物だということになってしまい、何も成立しなくなってしまいます。そのため、史的正当性を追い求めることはあくまでも楽しみとして共有し、今ここで楽しめる楽器を作ることが一番肝要なことだと考えています。