バロック弓の毛替え

昨日は、バーゼルにてアマンディーヌ・ベイエ Amandine Beyerさんのもとで古楽を学ばれている阪永珠水さんが、ご依頼いただいたバロック弓(クリップ・イン・タイプ)の受け取りのためにお越し下さいました。


バロック弓はモダン弓と構造が違うため、毛替えの仕方に構造的な理解が必要になります。

毛を留めているクサビが外れてしまうということであったため、毛量とクサビを直させていただきました。またバーゼルにこれから戻られるということで、毛の長さにもできるかぎり配慮をさせていただきました。旅をする楽器や弓を扱わせていただくのはいつも勉強になります。

国内ではまだまだバロック弓の毛替えが普及していないため、モダン弓と同じような毛替えをしてしまい問題を生じる事例をよく見かけます。

またその背景に理解と流通の問題もあるように思います。

理解については、「バロック弓からモダン弓に進化した」と考えられている場合が多いと感じるのですが、進化・進歩ではなく、「バロック弓からモダン弓に流行がかつて一時期変化したことがある」と理解した方が、バロック弓の特性を見失わずに毛替えができるのではないかと思います。何事も単純過ぎる進歩史観には注意が必要ということかもしれません。

流通については、バロック弓の形状を模した比較的安価な弓が広く販売されているのですが、そうした弓が構造的にモダン弓のように作られていることが多いため、混同が起きてしまっているようです。結果的にバロック弓に接することの少ない技術者の間でも誤解が生じてしまっているということがあるのではないかと思います。

先日拝見した、いくつかのブラジル製の弓も、中国製の弓も外見と素材はバロックやスネークウッド でしたが、構造は明らかにモダンでした。販売時点でそのような形になっているので、そうしたことがバロック弓の理解を妨げている原因になっているかもしれません。

そういう私もまだまだ理解が足らないので、バロック弓でお困りの方は、ご相談いただければご一緒に勉強し、状況を改善できればと思います。


弓の試奏も兼ね、スパッラの試奏や一緒にいらした天野寿彦先生と合奏を聴かせてくださったのはとてもうれしい時間でした。