お客様とのお話の中で出てきたことで、誤解されやすいことが1つあったので、書き留めておきます。
ガット弦の中で、ヴァーニッシュ弦、もしくはヴァーニッシュドと呼ばれる、ヴァーニッシュ(英:varnish)すなわち塗装が施されている弦があります。
一方でこちらのブログでも紹介してきましたが、裸ガットを長持ちさせるためにオイルに浸してしばらく置いておく方法があります。
この二つが混同されて、オイル漬けをすることでヴァーニッシュ弦を自作できると考えられてしまうことが時々ありますが、これら2つは実は弦の製法からしてまったく別のものなのです。
ヴァーニッシュ弦と、ヒストリカルな裸ガットを触ってみると、ほとんどの場合ヴァーニッシュドの方が表面の凹凸が少なく、滑らかな手触りです。これは塗膜ができていることによりそうなっていると思われがちですが、ヒストリカルな裸ガットに油を塗ってもこうはなりません。
では、どういうことかと言いますと、ヴァーニッシュド弦は弦製造の段階で弦をより研磨し、弦が作られたとき(裸ガットの状態)ですでにかなり滑らかなのです。
しかしそのままでは磨かれた分、繊維が切れやすくなってしまうため、それを補うためにポリウレタン系の塗装を施してしまうそうです。これにより実はヴァーニッシュド弦はほとんどプラスチックの塊のようになってしまいます。
これが多くのヒストリカルな演奏を追求する奏者からヴァーニッシュド弦が避けられる理由でもあります。
物は試し、実際に皆さんのお手元で試してみて、比べてみてください。
(写真:塗装されていないガット弦を張った調整中のヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ。上2本の裸ガット弦はオイル漬けにしてから使用)