今月のThe Strad誌にFrancois Denis氏がMusic of the Sphoeres というタイトルの記事を書いています。この中で、Lodovico Fogliano 1529年のMusica theoretica の挿絵などをもとにハーモニカル・プロポーションのことが説明されています。
Foglianoの書は楽器製作をそのものを説明するものではありませが、重要な要素と言えると思います。
少し残念なのは、これらが単純な整数比に置き換えてられて説明できるような印象を与えてしまっていることです。またこうしたプロポーションを具体的に実際の楽器製作にどう生かすのか、彼の2006年に出版されたTrite de Lutherieの中でもその関連は十分に説明されていないように思います。
これらの問題の根本にあるのは、やはり私たちが自然科学を当たり前の前提として生きる世界に馴染んでしまっているからではないでしょうか。ものごとを数値に置き換えたり、メートル法なども含めた数値があることが大前提とする観点からは、なかなか自然科学が台頭する以前の人々の感覚はつかめないようにも思います。
ヴァイオリンをはじめとする楽器が昔のすばらしい製作家の影響を受けつつも、現代においてそれぞれの製作家個々の楽器として、ハーモニカル・プロポーションの伝統を用いつつ、コピーではなく、オリジナルとして作られるのにはもう少し頭を柔らかくするための時間が必要なのかもしれません。
プロポーションの実際の用い方を理解すると、「何に基づき」「何を選択するのか」ということが明確になり、様々な種類の楽器(肩掛けチェロを含む!)やサイズの選択ができるようになってきます。
「単位」はそれ自体明確なもので、再現性を担保するには便利ですが、何に基づくか…を説明してくれないということでもあるということです。
著作権等の面がクリアになれば私の方でお話もできるのですが、それまではDmitry Badiarovさんの日本でのレクチャー公開が待たれます。