ヴァイオリンやヴィオラが弾ければ、大型のチェロを弾けなくてもたやすく弾くことができてしまうヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ((肩にかけて弾く小型チェロ)に魅了されながらも、その特殊サイズゆえに弦の選択が少ないという課題が、我々製作者の間にはありました。
この課題になんらかの糸口を見出そうと、昨年のうちに海外の製作者仲間たちとトマスティーク社に働きかけ、特注弦を作ってもらいながら、今年はさらに選択肢を増やすための努力を続けています。
現場ではまだ最も入手しやすいのがガット弦なのですが(裏を返すとそれだけガット弦は弦職人にとって機械にしばられない製作の自由度の高い弦であるということです)、現代のヴァイオリンがスチール弦や化学繊維をコアとした弦で演奏される機会が多いように、弦の選択肢を増やすことはこの楽器が普及する上での重要なポイントと言えるのではないかと思います。
またガット弦と現代の化学繊維弦では目指す方向性がまったく違うので、種類の異なる弦をもつことで、表現にも幅が出てきます。
まだまだ課題はありますが、今年の開発でもすでにかなりおもしろい発見があり、順調に進めば年内にさらに新しい弦がまたメーカーの協力のもとに開発できるかもしれません。
こうした弦の開発機会はめったにないため、この機会にヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを手に入れられた方は、おそらく新しいヴィオロンチェロ・ダ・スパッラのパイオニア(開拓者)となって、かなり脚光を浴びるのではないかと考えています。
何しろまだまだ知られていない楽器でありながら、バッハのチェロ組曲を弾くのに適し、かつまだ誰も弾いたことがない新・弦が手元に揃う可能性があるからです。
ご試奏をいただく前から、当工房をご信頼いただきすでにご注文下さった方もおられますが、今は先述のような意味で、またとない出来事に立ち会える機会ではないかと思います。
もうすぐ、私の手元にもトマスティーク社の弦が届く予定です。ガット弦、化学繊維弦、そして第三の弦を比べて試して、またリポートしたいと思います。