ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ、今日の工程

今日はアーチ作りです。

アーチは製作者によってアプローチの仕方が異なることが多いのですが、アーチの形にスタイルをもっていて毎回同じアーチを作り、厚みだけを変える人もいれば、毎回アーチの形が違う人もいます。

私はどちらかと言えば後者ですが、それは材の性質によって同じアーチで、同じ厚みにしてしまうと、強度が不足してしまったり、また逆に思うような厚みにもっていくことができなかったりするため、常に目の前の木と相談しながら進めます。

ただ自分のアーチのスタイルを崩さないスタイルの作り方は、平均的な質の材の供給が安定して得らる環境にあれば、問題ないと思います。

またアーチを表側の隆起から作るから、楽器の内側から作るかというアプローチの違いもありますが、私は表をほぼ仕上げてから内側を進め、内側の状況に応じて表のアーチを修正します。実際にはほんの些細なことなのですが、アーチと厚み作りは楽器製作の最もおもしろいところの一つだと思っています。

亡き師が昔、アーチと厚み作りを指して「Qua comincia il gioco!(ゲームはここからだぞ!)」と言っていたのを思い出します。

現在作っているヴィオロンチェロ・ダ・スパッラについては、木材と私の経験の2つに加えて、Dmitry Badiarov氏のアドバイスを加味して作っています。

Dima (Badiarov氏の愛称)とは10年来の付き合いですが、楽器づくりにおいて、原寸大ポスターなどからのコピーを作るのではなく、古来のプロポーションに基づいた楽器製作をするという価値観は、私の楽器づくりの原点でもあり、彼から学んだ最も大きなものです。

それを学んだことで、それ以外の全ての知識と技術が活かされるようになった気がします。

アーチもまた、楽器全体のプロポーションの中に含まれますが、アーチの隆起そのものは比率的なプロポーションでは測りきれないので、経験を最大限に生かしていきたいと思います。