ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラのブロック整形

引っ越し作業に追われていましたが、ようやく作業を少しずつ進められるようになりました。

ヴァイオリン属の弦楽器は、表板にトウヒ、裏板に楓(メープル)を好んで使うことが多いのですが、楽器の内部にあるブロックにはトウヒよ他に柳を使うことがあります。

今回は柳を使っていますが、柳というのはつい10年前までは本当に入手が難しい木でした。それは柳が畑の脇に生えている雑木の扱いで(農業用の用途はありましたが)、市場に植林され、育てられ、材木として流通する木ではなかったからです。

また材木として伐採されず適当に扱われていたために、適当な時期に切られ、結果虫がつくことも多かったものです。そのため、柳を買うときには匂いを気にしました。

もう15年以上前のことですが、昨年、他界されたクレモナのモラッシー氏(現代のイタリア弦楽器製作を今の隆盛に導いた立役者の一人)も生前に柳材はお店で扱っていないのかと尋ねたところ「柳はひどい、ひどい」とおっしゃっていたことを思い出します。

実際ここ5年ぐらいで随分入手がしやすくなったものの20年前にはよい柳を手に入れるには、知己を訪ねるしかありませんでした。

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラのブロックはコテ鑿(のみ)と呼ばれる外丸鑿の一種で削り落とし、ヤスリで仕上げていきます。何度も見直しが必要な作業で、目立たなくとも「美」がその姿を独り現すまで続けなければならない作業の一つです。

今日は夕方の作業になってしまいましたが、ブロックを成形し終えたら、次回は横板の曲げ作業に入りたいと思います。