チャンスと縁

来年からの工房設営、学校準備に追われ、朝から夜中まで忙しくしていますが、昨晩は姫路からお越し下さった膠(ニカワ)作りの大崎さんと、夕食を一緒にさせていただきました。

さて、ヴァイオリン属の弦楽器は、「木、膠、塗料、弦」の4つの材料からできています。

さらにこれらに技術者、製作家の「設計技術、木工技術」が組み合わさって、初めて弦楽器を作ることができます。

とてもシンプルですが、シンプルであるがゆえに、私たち弦楽器は製作者はその一つ一つをよく知らなければ、よいと胸を張って言える仕事はなかなかできないと感じてきました。

また自分が作らない膠や弦については、よい供給者と知り合い、つながることができなければならないと感じてきました。

今年はその意味で、流通・販売本意に売りやすいそこそこのクオリティのものを大量に作るのではなく、クオリティに的を絞って化学薬品を使わない昔ながらの膠作りを追求する大崎さん、モダンのガット弦と一線を画すバッハの時代のガット弦を知るDaniela Gaidanoさん、失われた楽器設計・デザインの復興を志すDmitry Badiarovさんらと知り合うことができた、めったにないチャンスの年となりました。

これまでに学んできた塗装や木工の技術に、新しく学んだことを組み合わすことができるまたとない好機が巡ってきたと感じています。

昨晩、膠作りの大崎さんと食事した渋谷の焼き鳥の名店「波多野」も、阿波尾鶏の素材をそのままに生かして焼いてくれる本当によいお店でした。

同じ阿波尾鶏を使っても、人によってお店によって焼いた結果が違うのは驚くべきことですが、「波多野」さんのように、奇を衒うことなく素材を生かし、食べて「美味しい!」と声に出していただけるような仕事はなかなか奥が深いものがあります。

急がす、弛まず、進んでいきたいと思いました。