ガット弦と調整

イタリア共和国アブルッツォ州ペスカーラ県、Salle (サレ)町に今も続くガット弦製造者Toro(トーロ)ファミリーの様子を移した動画です。

Toroさんの弦は国内では有限会社コースタルトレーディングさんが取り扱いをされていますが、興味があったのでイタリアのテレビ番組(?: “Talenti e Territori” )と思われるこちらの動画を見てみました。

動画はイタリア語ですが、ナレーターAlessandro Sonsini氏の冒頭の解説の要点だけ日本語にしてみたいと思います。

1600年ごろまではSalle では各家庭にcordaio(弦作り職人)がいたというほど、Salle 全体で盛んに楽器のための弦が作られていました。羊や豚のガット(腸)が使われていました。

しかし、1915年と1933年の地震によりこの地に残っていた弦産業は非常な打撃を蒙ります。さらに戦後はスチール弦やナイロン弦が導入されました。

今日、ガット弦作りの最後の伝統を引き継ぐのはPietro と Beniamino のToro兄弟です。

ということですが、地震については初めてこの動画で知りました。

動画の後半は、ほとんど弦作りに関することなので、映像を見ていただいた方がよいかと思います。

1つだけ、映像の中で出てくる演奏の音についてですが、好みはあると思いますが、私にとっては非常に鼻にかかった音(イタリア語でnasale ナザーレ)です。これがすべてガット弦の音かというと、ちょっと違うかなと思います。

やはり調整の問題だと思うのですが、単にガット弦を張れば音色が豊かになるということではなく、モダンのナイロン弦やスチール弦を張っても調整を十分にしなければ音色が整わないようにガット弦においても調整は重要だと思います。当たり前のことですが、ガット弦が昔に比べて手に届きにくい(他の弦に比べて)ようになった今日では、ガット弦を張っただけで判断してしまうことがあるように思われ、それは残念です。どの弦にもその響きを引き出す調整と、演奏者の感性がなくてはならないと思います。