最近、演奏家であれ、弦楽器技術者であれ、長い目で見たときのキャリアの積み方は1つしかないのではないかなと思います。
それは一言で言えば、縁を大事にすることです。
なぜ人と人が出会うのかはわかりませんが、私のような弦楽器職人は、研究者や学者ではないので、突き詰めていけば、自分の経験から語れることがもっともしっかりしたことで、それ以外のことはほぼ引用に過ぎないのです。その意味において、実際の自分の人生の中で、出会い、その出会いを通して多くを学ばせて下さり、確固とした言葉を語れる基盤を一緒に形作って下さった方々には感謝の思いしかありません。
人と人とのつながりは、まさにそこにしか生じないものなので、そこを大事にすることでその人ならではの唯一無二のキャリアが築けていくように思います。
また、振り返るとたいてい失敗したのはそうしたつながりを大事にできなかったときでした。
すべてを手に入れようとするのではなく、手に繋がったものを時間をかけても大事にするということを今年は改めて若い人たちと一緒に考えてみたいと思います。