小型チェロとの出会い

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ、もしくは「小さなチェロ」に出会ったのはちょうど今から11年ほど前のことだったように思います。

今はオランダに住んでいるDmitry Badiarov ディミトリー・バディアロフさんが当日日本に住んでおられて、しばらくの間同じ職場で働いて下さったことがきっかけでした。

最初、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラとも呼ばれる小型のチェロを見せてもらった時は、私の頭も固く、何が自分の目の前にあるのかすぐには飲み込めませんでした。驚いてすぐには受け入れられなかった人は多いのではないかと思います。

唯一理解できたのは、ヴァイオリンのように構えて弾けるチェロだということでしたが、私の周りではバディアロフさん以外に弾いている人がまったくいなかったため、きっとバディアロフさんのような特別な才能を持ち、専門的な研究をした人でないと弾けない楽器なのだろうと思っていました。

(後から、バディアロフさん自身もヴァイオリンしか弾けないにも関わらず、初めてヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを演奏会で弾いたのは、この楽器を作ってからたった2週間後だったということを知りましたが…)

そして、よく分からないながらも普通のチェロと同じ音域を持ちながら、優しい音のするこの楽器に魅了され、いつか作りたいとずっと思っていました。

上の写真は2008年に聴かせていただいたバディアロフさんらが催したコンサートのパンフレットです。

あれからもう10年経ったのかと思うと時の早さに驚かされますが、おかげで理解がゆっくりな私にもようやくヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの全容を少しずつ理解することができるようになり、その楽器を作る機会を得ました。

バッバの時代、チェロは必ずしも今のように大きなものではありませんでした。

チェロが今のように大きなサイズのものに定型化されたのは割合と最近のことなのです。(※実際にはもっと大きなサイズのものもありましたが、現代ではほとんど使われていません)

バッハの時代には単に「チェロ」と呼ばれていた小型のチェロを、ヴァイオリニストやヴィオリストのための新しい楽しみ、可能性として作っていきたいと思います。