ガット弦エキスパートのDanilaの動画で、ガット弦そのものとはあまり直接関係のないことなのですが、とてもすてきな内容なので紹介したいと思いました。
ガット弦の作り方については、他の記事や動画で見られるように動物の内臓を扱うので、匂いなどに悩まされる長時間労働です。
しかし、Danielaがガット弦について語るのがなぜ好きかと問われるならば、かつて彼女がガット弦の生産地であるサレの古老たちに当時の仕事をインタビューして聴く中で、誰もがその長時間におよぶ匂いのきつい仕事を嫌々やる労働だとは思っておらず、大変だけど生き生きとした仕事として語っていたときのことを思い出すからだそうです。
この動画を聞いて、私が思い出したのは江戸時代の記録を描いた渡辺京二氏の『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)に描かれたかつての、日本〜江戸期までの文化の姿です。
かつての日本も、能率は求めても、効率を最優先としない文化がどこかにあったように思います。そのような文化の中では、仕事はやらなければならないものである以上、いかに楽しんで皆でこなすかというものでした。
各地に残る田植え唄などはまさにそうしたものの象徴ではないかと思います。
何をもって豊かと言うか、貧しいと言うかは本当に難しいことです。
ガット弦作りの古老たちが、子どものように目を輝かして仕事を語る姿がDanielaの語り口から感じられ、現代社会におけるわれわれの仕事のあり方を逆に考えさせられます。