春の嵐

昨晩から関東は雨が降っています。大気は暖かく比較的強い雨は春の嵐の様相です。

春の嵐という言葉で皆さんは何を連想されますか?私は音楽もありますが、ヘルマン・ヘッセの小説『春の嵐』をよく思い出します。

ヘッセの『春の嵐』(原題 : Gertrud) は、音楽家たちの人生を描いたヘッセの比較的初期の作品だったと記憶しています。高校生の時に読んで以来、最近はあまり読む機会がありませんが、当時は高橋健二さん(ヘッセの小説や詩をほとんど翻訳されている名訳者)の訳書で読みました。

ヘッセの小説は、多くの詩や音楽がそうであるように、永く読んでいなくてもふとした時に思い出され、その余韻を感じさせてくれることがあります。今日のような季節の変わり目に、思い出す機会が訪れるのは、なにか街角で思いがけず、昔親しく深い時間を過ごした旧友にばったりと出会うことのようです。そして、ほんのひと時、短い挨拶を交わし、お互いの言葉や声の中から、当時の断片がかすかに想起されつつも、永くその場にとどまることはできないことを覚えて互いに元の道に戻るかのようだと感じます。