ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの運指

バディアロフさんが、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラをクイケンや寺神戸さんと世に問うた時は、まだ製作者も少なく、いったいそれが何なのかよくはわからないけど不思議な楽器だと捉えた方がまだまだ多かったように思います。演奏家でさえそうでしたから、一般に浸透するには時間がかかりました。

10余年を経て、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラへの理解は世界中で深まりつつあり、再興の黎明期を脱して、次のステージに進みつつある気がします。私も今回作っているスパッラを誰にどこで弾いてもらえるのかと思うととても楽しみです。ちなみ今回は、バディアロフさんからモデルを借りて、シギスヴァルト・クイケンや寺神戸さんのために作られたもの同じモデルです。プロポーションはしっかりチェック済みです。

さて、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラは音こそ、チェロの音程ですが、フィンガリング・運指はヴァイオリンやヴィオラと大きく変わりありません。そのため、今後、演奏機会、収入面などにおいて新しいポジションを得たいと思うヴァイオリニストやヴィオリストにとっては、スパッラへの取り組みは大きな飛躍の鍵になるように思います。

バディアロフさんの努力で世界中で製作者が増えていることもあり、スパッラが、クラシックの音楽シーンに大きな変化をもたらすのもそう遠くない気がします。

その時には、もはやスパッラは、珍しく楽器ではなく、古き忘れられた音楽を掘り起こす鍵であると同時に、新しい音楽を創り出す鍵になるかもしれません。

クラシックはかつて古典であり、ポップスであり、宗教音楽であり、ロックであり、ロマンチックなものであり、パンクであり、全てであったことは多くの人が感じるところです。これから再びそうならないと誰が言えるでしょうか?!